PCR検査「全然受けられない人」を続出させる闇 クラスター対策への拘泥が現場を疲弊させる
だが、3月中は保険適用後も1日の検査数はほぼ1000件から2000件の間で横ばいを続けた。目に見えて増え始めたのはようやく4月に入ってからのことだ。厚生労働省によれば、4月下旬時点で、1日当たりの検査能力は1.5万件超とされるが、実際の検査数は多い日でもおおよそ8000件台と半分程度にとどまっている。
首相指示から2カ月近く経っても、医師が必要と判断するすべての患者が検査を受けられるには程遠い現実の背景にあるのが、検査を受けるまでの流れにある相談センターと接触者外来の双方に生じている目詰まりだ。
相談センターの多くは保健所が運営しているが、新型コロナ関連の多くの業務を最前線で担っており、目下殺到する電話相談に対応するには、圧倒的に人手が足りていない。
検査を担う接触者外来の悩みも深い。同外来を担う医師によれば、「新型コロナの感染者は発熱外来に来る患者の一部だが、一見しただけではわからないので、つねに重装備で感染対策をしながら診察しなければならない」という。
こうした現場の窮状を受け、医師会や自治体が動き出した。東京都医師会は4月半ば、自治体と連携し、所属の医師らが運営するPCR検査所を設置すると発表した。各地の自治体では、車に乗ったままPCR検査を受けられる「ドライブスルー方式」の導入が検討されている。
厚労省も現場の動きを追認する格好
ところがこうした動きに学会は異を唱えてきた。「軽症例には基本的にPCR検査を推奨しない」。4月、日本感染症学会、日本環境感染学会が連名で発表した、新型コロナに対する「臨床対応の考え方」にはそう記されている。
厚労省も医師会運営の検査所やドライブスルー方式を認める事務連絡こそ出しているが、現場の動きを追認する格好であり、検査拡充の旗振り役にはなってない。