滝沢カレン節炸裂の「料理本」劇的ヒットの必然

レシピがこんなにも文学的になるなんて

有賀氏はハードルが高い理由に、工程が多い料理が多く選ばれていることも挙げる。確かに、切って炒めるだけ、煮るだけではなく、ロールキャベツ、シュウマイなど丸める、包むといった手順が多い料理が目立つ。ラザニアに至っては、ミートソース、ホワイトソースをそれぞれ作り、パスタを茹でて、それらを層にして器に敷き詰めてからオーブンで焼く、と下準備に3つもの作業を別々に行う必要がある。

それを楽し気に説明する滝沢氏は、料理が好きで得意であることが分かる。有賀氏も、一見ファンタジックだが、ちゃんと読むと地に足が着いた生活感がある説明に「親近感を抱いた」と言う。

新しいレシピ本の世界を切り開く可能性

この生活感も、もしかすると国民の生活感覚からズレた政策ばかりが飛び出す政府を見守る人々にとって、安心感をもたらしているかもしれない。

レシピ本として考えると、同書は新しい世界を切り開くかもしれない。有賀氏は、「これだけ長いテキストの料理の本を出せるカレンさんがうらやましい。私もテキスト中心で、分量を説明しない本を作りたいです」と言う。

同様の感慨を抱くのは料理家の山脇りこ氏だ。「レシピは『簡単なものをお願いします』と依頼されることが多いですね。料理しているときの感じ方をそのまま、自由な表現で書く本を作りたいとは思います」と話す。

山脇氏は2010年、翌年に出す初めてのレシピ本のレシピ原稿を当初、感覚的な表現で提出し、編集者から却下されたという。「読者が正しく再現できるように、分量はより正確に、火加減や水加減もきちんと伝わるように書かなければならない、と編集者さんや校閲さんに教えられ、育てられてきました」と話す。

しかし、「この10年で、料理業界も変わってきたのかもしれないですね」と、山脇氏は言う。例えば、同時期にデビューしたブロガー出身の山本ゆり氏は、レシピ本に大阪弁の一言コラムをレシピ本に挿入している。料理のコツを伝える解説もあれば、冗談のこともある。独自の世界観をくり広げる山本氏は、レシピ本のベストセラー作家でもある。

「山本ゆりさんは、料理だけじゃなく書かれていることがおもしろくて大好きなんです。日々の暮らしのエピソードを直接伝える料理ブロガーさんたちの登場は、レシピの書き方を大きく変えたのかもしれないですね」と話す。

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