滝沢カレン節炸裂の「料理本」劇的ヒットの必然

レシピがこんなにも文学的になるなんて

擬人化した表現は頻発する。ロールキャベツは、キャベツの葉を男性に、ひき肉のたねを女性に例えており、煮る工程は合同結婚式と説明する。麻婆豆腐はひき肉を男子生徒に、ネギを女子生徒に、木綿豆腐を教育実習生に例え、料理する人を校長先生に位置づける。

この説明で「分かる」と思った人は、滝沢氏の解説で料理ができるだろうし、「面白い」と思った人は、エッセイ集としてこの本を楽しめるだろう。「意味が分からないし不愉快だ」と思った人は、読まないほうがいい。その人の感性で、好き嫌いがはっきり分かれそうな本である。

料理初心者にはハードルが高い?

斬新なレシピ本には料理かからも驚きの声が上がる。「初めて見たとき、この感覚的な表現は、分かりやすい実用性を求められる料理家には絶対できない、と衝撃を受けました」と話すのは、以前からインスタグラムで滝沢氏をフォローしていたという、スープ作家の有賀薫氏。「この本には、2つの見方ができると思います。1つは文学的なエンタメのタレント本として、2つ目はレシピ本として」。

ロールキャベツのレシピでは、キャベツと中の肉だねを男女に例えている(写真:サンクチュアリ出版提供)

「1つ目については、読書しない人向けの本を出すサンクチュアリ出版が出した意味が大きい。ファンタジーっぽく、食材を擬人化していて、物語として楽しい。コロナウイルスの脅威で実用情報ばかり流れる今、私たちは疲れている。友だちとご飯も食べられない生活に、こういう本が飛び込んでくるタイミングのよさは、偶然とは思えない」

確かに、巣ごもり生活で息が詰まる人が多い中、ユーモアあふれる同書は読んで癒される人が多そうだ。エンタメと考えれば、ポピュラーな料理を選んでいる意味は大きい。紹介されているのは、作りたい料理というより食べたい料理なのである。

一方、分量が書かれていないため実用書としては問題がある、と有賀氏は指摘する。

「初心者は、この本を読んでもたぶん作れない。私も3月に出した新刊では当初、話し言葉で分量がなくてもいいよね、と編集者と話し合っていました。読者に自分で考えて好みの味つけにできるようになって欲しい、と私たちは思っていたので。

でも、実際に本を作り始めると、大さじ1杯と小さじ1杯の量の違いも分からないかもしれない人に読ませようと思えば、分量がないと厳しいと気がついた。結局、調理時間と分量を入れました」

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