院内感染と市中感染の対策は全く違う。院内感染を抑制するために、緊急事態を宣言し、都市機能だけを抑制しても意味がない。
緊急事態宣言が有効なのは、市中感染が急増している場合だ。本当に、今になって日本で市中感染が急増しているのだろうか。都市の活動を抑制しなければならないのだろうか。
下図は日本、台湾、韓国の新規感染者数の推移だ。韓国と台湾はすでにピークアウトしていることがわかる。いずれも新型コロナウイルスが生まれた中国に近く、欧米のような極端な都市封鎖は実施していない。韓国は4月15日に国会議員選挙を行ったくらいだ。
私は、日本でも今、発表されている数字よりもはるかに大きな数の新型コロナウイルス感染者が市中にいる可能性があると考えている。このことを検証するうえで参考になるのは、国立感染症研究所が発表しているインフルエンザの超過死亡推定データだ。
下図は国立感染症研究所のホームページから拝借した。東京においては、昨年末、さらに今年に入り第8、9週で超過死亡を確認している。
超過死亡とは、世界保健機関(WHO)が提唱したインフルエンザ流行による死亡数を推計するための指標だ。非流行時の場合に発生すると考えられる死亡数(悪性腫瘍や心疾患などによる)をベースラインとし、実際の死者数と比較する。超過死亡は予測死亡数の95%信頼区間の上限値との差で示される。超過死亡が存在するということは、何らかの感染症の流行がなければ、死亡者の増加は説明できないことを意味する。
インフルエンザの流行を見てみると?
昨年末の超過死亡の存在は、インフルエンザの流行で説明が可能だ。下図をご覧いただきたい。東京都感染症情報センターのホームページから借用した。昨年末は例年になく、インフルエンザが流行したことがわかる。
ところが、今年の1月半ばよりインフルエンザの流行は勢いを失い、2月以降は昨年の4分の1以下だ。ところが、8、9週には超過死亡が確認され、例年以上に多くの方が亡くなっている。
2月と言えば、4日には、タイ保健省が、1月下旬に日本に旅行した夫婦が新型コロナウイルスに感染していたと報告した時期だ。この夫婦は日本滞在中に体調が悪くなった。
また、WHOは2月12日に発表した「コロナウイルス・シチュエーション・レポート」において、韓国で日本から持ち込まれた感染があったと報告している。
いずれも極めて重要な情報だが、日本ではほとんど報じられず、厚労省も無視したと見られる。このころから日本国内で感染が蔓延し始めていたと、私は推測している。
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