遍在するネットワーク
自然界は、物理学者のジェフリー・ウェストの言葉を借りると、人間の循環系からアリ塚まで、「最適化され、空間を埋める、分岐したネットワーク」からできており、面食らうほどそれが徹底しているという。
それらのネットワークはみな、巨視的な供給源と微視的な利用場所との間に、驚異的な27桁の大きさの範囲にわたって、エネルギーと物質を行き渡らせるように進化した。動物の循環系、呼吸系、腎臓系、神経系は、すべて自然のネットワークであり、植物の脈管系や、細胞内の微小管とミトコンドリアのネットワークも同様だ。
現代の生物学によって、線虫の神経系から食物連鎖(あるいは「食物網」)まで、地球上の生命のあらゆるレベルでネットワークが見つかっている。
ゲノムの塩基配列決定のおかげで、「ノード(節点)が遺伝子であり、リンクが反応の連鎖である」ような「遺伝子の調整ネットワーク」の存在が明らかになった。河川の三角州もネットワークで、学校で使う地図帳にはそれが描かれている。腫瘍もネットワークを形成する。
感染症が広がる速さは、病気の毒性自体だけでなく、病原体にさらされた人々のネットワーク構造にもおおいに関係があり、20年前にジョージア州ロックデイル郡のティーンエイジャーの間で発生した病気の流行が、それを雄弁に物語っている。
接続性の高いハブがいくつかあると、病気は最初はゆっくり広まった後、指数関数的に広がっていく。別の言い方をすると、「基本再生産数」(感染した典型的な人から新たに感染する人数)が1を超えると病気は流行し、1を下回ると終息する傾向にある。
だが基本再生産数は、その病気固有の感染力だけではなく、感染するネットワークの構造にも左右される。ネットワークの構造で、病気が診断される速さと精度も決まりうる。
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