キューバ人が資本主義に抱いた「何かが違う感」 モノがないキューバが最高なわけではないが

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サンティアゴ時代のリーさん。近代的なビルが並ぶ風景はキューバにはない(写真:リーさん提供)

頼りにしていた幼なじみも、リーさんの相談に乗る余裕はなかった。「キューバではみんなお金はないけれど、友達が困っていたら親身になって助けてくれます。だけどチリに住んでいると、お金はあるはずなのに気持ちの余裕がなくなってしまう。ほかに頼れる人がいなかった僕はパニックになりました」。

その後リーさんは、チリの首都サンティアゴの会社に声をかけられ、転職する。しかしいざ働いてみると、最初に提示された給料の3分の2しか支払われなかった。

「世界中どこでもそうだと思うけど、移民は社会のことがよくわからないからだまされやすい。サンティアゴは家賃が高いので、最初の2カ月はパンとインスタントラーメンだけで過ごしました」

キューバにいたほうが貯金ができる?

再び転職し、安定した給料をもらえるようになったリーさんだったが、今度はキューバに戻ることを考え始めた。

「チリではキューバよりたくさん給料がもらえたけど、家賃など出ていくお金も大きかった。キューバに戻って観光の仕事をしたほうが、チップがあるから貯金できるのでは、と考えました。キューバは家賃も無料だし、固定費はほとんどかからない。それにモノがないので、お金があっても使うことがないから(笑)」

キューバの平均給与は634ペソ(2019年時点、約26USドル)。日本円にして3000円に満たない月収で生活できるのは、無料もしくは限りなく安い住居や教育、医療サービスがあるからだ。必要最低限の食料や日用品の配給は続いているため、極端な話、働かなくても路頭に迷うことはない。友人が困っていれば家に泊めてごはんを食べさせる、助け合いの精神も社会に浸透している。

「チリでは生活の不安がずっとあったから、キューバに戻ったらホッとしました」。リーさんは再びツアーガイドとして働き、貯金もできるようになった。しかし時代はトランプ政権に移り、オバマ政権時に緩和された経済制裁が再び引き締められる。

トランプ大統領はアメリカからキューバへの渡航・送金・投資を制限。さらに、長年ベネズエラからキューバに優遇価格で提供されていた、原油にも圧力をかけた。アメリカが1996年に定めたヘルムズ・バートン法により、アメリカ企業だけでなく、キューバと取引した第三国の企業や銀行にも高額の罰金が科せられる。キューバへの経済制裁が「世界一厳しい」と言われるゆえんだ。キューバ経済は再び後退していった。

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