次に多い有形固定資産は、道路や堤防といった公共用財産や国の庁舎等からなり、売却して換金することが想定できないものである。貸付金は、大半が、中小企業や地方自治体や奨学生に向けた貸付や、かつて(住宅金融公庫を通じて)行っていた住宅ローンである。
確かに、この貸付が返済されれば、負債を返済できる。しかし、中小企業や地方自治体や有利子奨学金を受けた元奨学生や今なお残る住宅ローンの債務者には、長期で貸し付けており、すぐに返済されるものではない。また、債務者は繰上げ償還すれば補償金というペナルティーが科される。
出資金は、国際機関への出資金や政策的に国に保有義務のある株式等から成る。外交政策や、NTTやJTや東京電力などへの出資方針を大きく変更しない限り、これらの出資金を換金して負債の返済に充てることは難しい。
税金で賄うべきものを、郵貯や公的年金で取り繕うな
政府が保有する資産で無駄に保有しているものは売却するなどして減らし、負債の返済に充てることは、きちんと進めて行くべきだ。しかし、前述のように、多くの資産は、負債の返済財源に容易に充てられるものではないから、資産の処分ができれば増税は不要、とはとても言えないのが、わが国の財政状況である。
このように、国の一般会計や特別会計だけでなく、独立行政法人や特殊会社(国が設立し出資する株式会社)まで含めて財務状況を把握することによって、国の財政状況の全般を理解できる点で、連結財務書類は極めて有用である。
ただ、連結であるがゆえに税金で営む一般会計も、郵便貯金も、公的年金も一括して記載されているだけに、その読解力が問われる。税金で賄うべきものを、郵便貯金や公的年金のおカネで取り繕うことはできない。そこを見誤ると、本来直視しなければならないわが国の財政状況を誤解しかねないのである。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら