国の借金返済に、使えるおカネはいくらか 「国の連結決算」で見えること、見えないこと

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債務返済財源に使える資産は、本当はどれだけ?

 国の財政は、債務超過でその額が増えている、ということだけで議論を終えてはならない。その詳細を見る必要がある。先に、負債の内訳をみると、公債(要するに国債)が約620兆円、郵便貯金が約175兆円、公的年金預り金が約118兆円、責任準備金が約109兆円、政府短期証券が約95兆円、独立行政法人等債券が約46兆円、借入金が約36兆円、その他が合わせて約70兆円である。

このうち、公債と政府短期証券と独立行政法人等債券と借入金は、要するに国の一般会計や特別会計や独立行政法人等の借金である。郵便貯金は、連結対象である日本郵政株式会社の一部である、株式会社ゆうちょ銀行に国民が預けている郵便貯金が負債計上されたものである。

公的年金預り金は、公的年金積立金にほぼ相当するもので、将来の年金給付のために積み立てられているおカネである。責任準備金は、主に、連結対象である日本郵政株式会社の一部である株式会社かんぽ生命保険で将来の保険金などの支払いに備えて積み立てられているおカネである。

負債の内訳を踏まえつつ、資産の内訳をみると、有価証券が約272兆円、有形固定資産が約269兆円、貸付金が約186兆円、現金・預金が約41兆円、出資金が約13兆円、その他が合わせて約41兆円である。

国が債務超過になっているというが、資産も多く持っているのだから、資産を売却すれば借金返済のための増税はしなくてよい、という意見があるが、債務返済財源に使える資産はどれだけあるだろうか。

まず、国やその外郭組織が持っている有価証券は、主に3つから成る。1つは、連結対象である年金積立金管理運用独立行政法人(以下、GPIF)が預かっている年金積立金の運用先として投資しているものである。

もう1つは、連結対象である日本郵政株式会社が保有する有価証券(一般会計などが発行する国債は相殺)である。そして、外国為替資金特別会計で保有する外貨証券(米国債など)である。この外貨証券は、円高・ドル安を止めるために政府が為替介入した際に得たドルを、ドル建てで運用しているものである。

GPIFが運用する有価証券は、売却できたとしても、それを国の借金返済に充てられるはずはない。これは年金積立金が元手なのだから、将来の年金給付に充てなければならない。日本郵政が保有する有価証券も、売却できたとしても、預金者に利子をつけて返すべきものであって、借金返済に充てられるはずはない。

外貨証券を円建てで換金しようとするなら、米国債などを売却しなければならず、その時には外国為替市場でドル売り・円買いをすることになり、円高・ドル安を助長しかねない。したがって、円高を容認できない限り外貨証券を売却して、負債の返済に充てることは難しい。

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