介護する側(ケアラー)や要介護者が感染した場合、行政はどう対応するのか。例えば、東京都世田谷区の担当者はこう話す。
「地域包括支援センターやケアマネジャーと相談しながら、最適な方法でやらせていただく。保健所で『要介護者が濃厚接触者』と言われたら、もちろん要介護者は施設に居られません。その時は、1人ご自宅で観察期間を過ごせるようにします。介護事業所と調整しながら、ヘルパーが様子を見に行くとか」
厚生労働省老健局振興課の担当者は「自治体がサービスの主体となりますので、自治体と事業所、地域の保健所、ケアマネジャーの方が、迅速な連携を」と言う。
いずれにしても、最後の頼りは各家庭に足を運ぶ介護福祉士や訪問介護員などになる。これに対し、介護従事者の労働組合「UAゼンセン日本介護クラフトユニオン」の村上久美子・副事務局長はこう指摘する。
「いつも(最後は)事業所で責任を持ってやれ、となる。それでは困るんです。今は『コロナに感染するから仕事に入りたくない』というヘルパーさんが増えています。小学校の子どもがいる方とか。一方では、担当している利用者(要介護者)さんを看る人がいなくなるので、『休みたくても休めない』と言ってるヘルパーさんもすごく多い」
介護業界はもともと人手不足だ。そこにコロナ問題が起き、今の現場は「行政が考える以上に深刻です」と村上さんは言う。
「介護は、唾液に触れる食事のケアや排泄のケアといった感染リスクが高い現場です。衛生用品も足りない。そんななか、対応は事業所に任せっきりです。特に訪問介護の場合、1日に数件も家庭を周るため、感染したり、させてしまったりするかもしれない。恐怖と戦いながらの仕事です。介護は『最後の砦(とりで)』と言われますが、それなら、せめて国から(特別な)手当くらい出してほしい。『現場を見てください』です。最後の最後に(責任だけ)回ってくるんですよ」
「専用の避難所を」と専門家
在宅で介護を受けていた人が最悪の状況に陥らないために、現実的な対応策はあるのだろうか。介護福祉士やケアマネジャーの資格を持つ淑徳大学総合福祉学部の結城康博教授は「専用の避難所を作ったほうがいい」と考えている。
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