コロナが「地域の病院」にとんでもなく厄介な訳

一口に医療崩壊といっても単純な話じゃない

和田医師はこれを「感染症指定病院の医療崩壊」と呼ぶ。そして、別の側面が「地域病院の医療崩壊」であるという。ここには冒頭の診療所の状況だけでなく、後述する市中病院の院内感染などの問題も含まれる。

わだ内科クリニックの場合、患者が減り始めたのは3月に入ってから。同院を訪れる患者は大きく2つのタイプに分けられる。風邪やインフルエンザ、胃腸炎などの急な病気で診療所を訪れる患者と、慢性疾患を抱えていて定期的に受診する患者だ。

診療所に来なくなったのは、従来の風邪やインフルエンザなどの急な病気になった患者だ。その背景には、新型コロナウイルス感染に対する厚生労働省の呼びかけがある。

「風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く場合」、あるいは「強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合」を受診の目安とし、それ以外は家で安静にしていることが推奨されている。

この結果、従来の風邪やインフルエンザなどを疑うような症状があってもすぐに受診せず、様子をみる人たちが増えたのだという。地域の診療所に新型コロナウイルス感染症が疑われる患者が殺到する事態を防いでいる側面は確かにあるものの、慢性疾患を抱えた患者の受診の様子も以前とは違ってきているという。

「感染が怖いから診察室に入りたくない」

「感染が怖いから診察室に入りたくない。薬だけ欲しい」と診察を拒む人も出てきているのだ。こんな状況はいまだかつてなかったという。

「もちろん、今の状況であれば電話再診で薬を処方するという方法は勧められます。ですが、それは体調が落ち着いている人の話であり、毎回、血糖値を測らなければならないような方は診察や検査が必要です」(和田医師)

この状況は診療所の経営問題に直結する。筆者も和田医師と同様の声を、数人の開業医から聞いている。

「メディアは、自粛要請などが出た飲食店などの困窮した様子を報じています。これとまったく同じ状況に、多くの診療所も陥っています。実際問題、このままでは自分の診療所も潰れるのではないかと、不安で仕方ありません」と和田医師。

別の医療関係者が付け加える。

「診療所の多くは、X線検査や超音波検査など高額な医療機器をリースに頼っている。そのリース代は結構な負担になります。また、専門職である看護師さんなどの人件費も高く、家賃も馬鹿にならない。日々の診療で収入を得ている開業医は、飲食店と同様、患者さんが来なくなればやっていけなくなります」

帝国データバンクのデータによると、医療機関の倒産で最も多い理由は「破産」だ。2019年の倒産は2010年以降最多だった。今年以降、それを上回る可能性があることは想像にかたくない。

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