コロナ後の過剰流動性がもたらすインフレ圧力 無制限の経済対策が生むコロナ後の禍根

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経済活動が止まっていれば、出回った通貨も滞留しがちである。どれほどスムーズかにもよるが、感染が収束すれば経済活動はショック前に近い水準に早晩回復するだろう。雇用や取引関係を維持できれば、その分だけスムーズに復旧するはずだ。ただ1点異なるのは、世に出回る通貨量である。

政府は全国民に対し、1人当たり10万円の特別定額給付金を一律給付する。金融機関も資金繰り支援のために、追加的に融資を増やす。そうした状態から経済活動が再開するとなれば、何が起きるのか。

インフレ圧力が存在することだけは確かだ。それがどれだけ物価上昇につながるかは、感染収束のタイミング次第ではある。緩やかなデフレが20年余も断続的に続いていて想像しにくいが、コロナショックを口実に財政も金融も未曽有の規模に拡大しており、インフレ圧力にならないはずはない。目下そう見えないのは、経済活動を人為的に止めているからだ。

過剰流動性が生んだ「狂乱物価」

過剰流動性という言葉が日本で初めて取り沙汰されたのは、1971~1973年である。大規模な金融緩和に加えて、「日本列島改造」を掲げた田中角栄内閣は大規模な予算拡張を行った。「田中角栄を想起させる安倍首相の『財政出動』」で詳述した「列島改造予算」である。これらの政策は第1次石油ショックも重なり、狂乱物価を助長した。

石油といえば、4月にWTI原油先物価格が史上初めてマイナスになるという異常事態となった。今後、産油国の減産や石油関連企業の経営破綻がありそうだが、感染収束後の経済を見据えると、経済活動が再開しても、原油供給がコロナショック前のようにすぐには復旧できないことも懸念される。

原油の供給が滞れば、過剰流動性がある中では、ますますインフレ圧力を高めることになる。もちろん、マイルドな物価上昇であればよい。デフレから脱却したほうが企業活動にとってもプラスである。

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