森トラスト「ホテルほぼ休業」に踏み切った事情 伊達美和子社長が語るコロナ「本当のリスク」

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――ホテル各社の資金繰りも心配です。

資金繰り以上に、観光業の稼ぎ時である夏の収入を失う懸念が大きい。ゴールデンウィークに需要を見込めない中、次にやってくる(かき入れ時の)シーズンが夏だ。ゴールデンウィークに気休め程度の集客を実現しても、そのせいで5~6月に感染が拡大してしまえば、7月以降の大きな需要を失ってしまう。

――緊急事態宣言は5月6日に解除されると考えていますか。

解除されるとは思っていない。コロナの感染状況が足元で劇的な収束を見せていない中で、仮に(外出自粛などの)姿勢を緩めても、また元に戻るだけだろう。

夏まで長引くと資金繰りは厳しい

――観光業にとっては、中途半端に緊急事態宣言を解除されるよりも、夏休みまでに完全に収束してくれた方がありがたい、と。

もちろん足元の経営状況も本当に大変だ。ただ、リゾート型の観光地からすれば、5~6月の機会損失よりも、夏までこの状態が続いた場合の懸念の方が大きい。

夏までに復活し、年度の後半で巻き返しを図るのが理想的だ。逆に、それ以上長引くとキャッシュフローの厳しい事業者が増えてしまう。

――感染の収束後に備え、官民一体の「地域観光再興プラン」を提案しています。

夏までに感染が収束すれば、(観光の)シーズンでもあるので自然に国内旅行が活性化するだろう。ただ、数カ月分の収入をロスした事実は変わらない。シーズンオフである秋や冬の需要を興す必要がある。そのためには、各観光地の努力が必要になってくる。

近年の観光業界は、自然発生したインバウンド需要を取り込むだけで終わり、新しい需要を興すための努力ができていなかった。仮に2020年に東京オリンピックが予定通り開催され、政府目標であるインバウンド年4000万人を実現したとしても、2030年の目標である同6000万人を達成するには、各地のポジショニングやブランド戦略が不足していただろう。

(コロナで)観光客がまったく来なくなってしまうと、地域経済が成り立たなくなることを再認識し、地域として観光振興の方向性を明確にする、都市計画のようなものを早く定めるべきだ。

――2019年ごろからホテルの供給過剰が懸念されてきました。コロナがこの状況に追い打ちをかけ、資産としてのホテルの評価が下がることはありませんか。

経済的な痛手がどれほどまで拡大するかによるが、世界の旅行需要はリーマンショックを経ても伸び続けてきた。すぐに成長ペースが戻るわけではないだろうが、旅行そのものがなくなるわけではない。

日本は近年、世界の観光市場において注目を集めてきたが、東京オリンピックの延期も含め、注目度が希薄化する可能性がある。ただ、2021年にオリンピックを開催できるのであれば、それは苦難を乗り越えた復活のストーリーになりうる。

日本に注目を戻すチャンスだと考えれば、東京2020ではなくて「東京2021」でも構わないはずだ。今は業界として我慢に徹するほかない。

森田 宗一郎 東洋経済 記者

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もりた そういちろう / Soichiro Morita

2018年4月、東洋経済新報社入社。ITや広告・マーケティング、アニメ・出版業界を担当。過去の担当特集は「サイバーエージェント ポスト藤田時代の茨道」「マイクロソフト AI革命の深層」「CCC 平成のエンタメ王が陥った窮地」「アニメ 熱狂のカラクリ」「氾濫するPR」など。

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