伝染病で26年以上も隔離された女の数奇な人生 腸チフス菌を持ち続けたメアリーが受けた差別
「2人目のメアリー」を生み出してはならない
本書の巻末「おわりに」の部分に、著者はこう記している。
そのような恐怖感が心のなかに住み着いてしまうことは、残念ながら人間の基本的条件なのかもしれない。冒頭で引き合いに出した、宅配便ドライバーに対する行いにもそれは表れている。
だとすれば今後、人々が未来の「チフスのメアリー」を同定し、恐怖を感じ、隔離し、あざけり、貶めるという構図が繰り返される可能性がないとは言い切れないだろう。
全人類がコロナ禍に翻弄され、「すぐ近くに感染者がいるのではないか」と怯えざるをえない状況であるからこそ、つまり、いわれのない差別意識が生まれやすい状況であるからこそ、われわれは知性をよりどころにするべきだ。
安易な感情の高まりに任せて、「2人目のメアリー」を生み出すような選択をしてはいけないのだ。そのことについて考えてみるためにも、本書をぜひ手にとっていただきたいと思う。
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