「夏まで持たない」窮地のミニシアター救えるか 多くの映画関係者が資金集めに精力的に動く
また「ミニシアターを救え!」の連携プロジェクトとして、深田晃司監督、濱口竜介監督ら有志が集まり、「ミニシアター・エイド基金」を立ち上げた。すでに全国109の劇場(参加運営団体数は92)が参加を表明している。4月13日にスタートしたこのクラウドファンディングは、わずか57時間で目標金額の1億円を達成した。4月20日時点で1億5000万円を超えており、単純計算だと1館あたり160万円ほど支援できる計算となる。
発起人である映画監督の深田晃司氏は、「今回のアクションによって、ミニシアターになくなってほしくないと願う人がこれだけいるということが可視化された」と手応えを感じていた。
「本来は、平時においてもこの願いをきちんとくみ取り、劇場を恒常的に支援する公的な枠組みがあるべき。それは、国だけの責任ではなく、映画業界の内部においてさえも制度設計がおろそかにされてきたことの反省をコロナ禍後に私たちは行い、改善していかないといけない。一方で、まずは『手の届く範囲の共助』として、1~2 カ月はミニシアターに頑張ってもらえるだけのごく最低限の資金を届けられるよう、クラウドファンディングを行った。
皆様のおかげで迅速に目標額に達し喜んでいるが、クラウドファンディングが企画された2週間前と比べて状況は大きく変わっている。日本において新型肺炎の状況は悪化してきていて、本当に安心して私たちが映画館に足を運べる日が遠のく可能性がある。より十分な支援を多くのミニシアターに届けるため、目標設定の見直しを検討している」と語る。
映画館は映画のゆりかご
全国にミニシアターの支援の輪が広がっているが、大分県のミニシアター別府ブルーバード劇場の名物館長・岡村照氏は、「別府にも昔は30以上もの映画館があったが、今ではうちの映画館のみとなってしまった。映画館がなくなるのは大変寂しい。しかし私がいつも大切にしているのは、ある監督からいただいた“映画館は、映画のゆりかご”という言葉だ」と語る。つまり、映画館がなければ映画は育っていかないということだ。
インディーズ作品ながら社会現象を巻き起こした『カメラを止めるな!』の例をあげるまでもなく、数多くの才能あふれる人材がこのフィールドで腕を磨き、やがて世界で認められるような映像作家になっていった。それを支えてきたのは、そうした作品を上映するミニシアターの存在であることは間違いない。
名古屋のシネマスコーレの坪井副支配人は、休館して1週間近く経った今の心境を次のように語る。
「休館して、むしろ映画館を継続したいという気持ちがさらに増している。休館する期間が長引いたとしても何とか生き残りたいという生命力のような希望が湧いてきている。どこまでやれるかわからないが、少しでも良い先の未来へ歩いていく努力をしていきたいと思います」
日本国内には映画のスクリーンが約3500あるが、うちシネコンのスクリーンが9割弱を占める。逆にいえば、ミニシアターのスクリーンは1割程度しかない。しかしその1割のミニシアターが世界各国の多種多様な映画を上映し、映画文化の多様性を担保している。
日本が世界に誇るべきミニシアター文化も、一度失ってしまったらもう元には戻らない。そのためにできることはまだまだたくさんある。
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