「夏まで持たない」窮地のミニシアター救えるか 多くの映画関係者が資金集めに精力的に動く
これは「仮設の映画館」のWEBサイトに掲載されている全国各地の劇場一覧の中から、自分が行きたい映画館を選択すると、配信で鑑賞した鑑賞料金がその映画館にも分配されるという仕組みとなる。
想田監督も「もしこれがうまく機能すれば、映画館だけでなく、配給会社や製作者にも、通常の劇場公開を行った場合と同程度の収入が見込める。さらに『精神0』以外の作品でも同様のことが行えれば、たとえリアルな映画館が一時休館せざるをえなくなっても、収入の道が確保できる。コロナ禍が過ぎた後、劇場・配給・製作の三者が生き残っている可能性が高まる」と語る。
それに続く形では、アップリンクは、自社が配給する『ホドロフスキーのサイコマジック』を4月24日から「寄付込みオンライン先行上映」を実施する。同社が運営するオンライン映画館「アップリンク・クラウド」で期間限定のストリーミング配信を行い、その売り上げから、本作の上映を予定している全国の映画館へ均等に分配するという。
そうした動きを連携させる試みも始まっている。映画監督の是枝裕和、白石和彌、諏訪敦彦、塚本晋也の各氏や、俳優の柄本明などをはじめとした多くの映画人が呼びかけ人となり、「ミニシアターを救え!」プロジェクトを立ち上げた。このプロジェクトでは、政府に対して緊急支援を求める要望書を作成・提出をするほか、クラウドファンディングなどを活用した具体的な施策を断続的に実施することを掲げる。
国に窮状を訴える
4月15日には、前日までに集まった6万7000筆の署名と共に、内閣府、厚生労働省、経産省、文化庁の4省庁をまわり、国に緊急支援を求める要望書を提出した。
同日に行われたオンライン会見の場では、弁護士の馬奈木厳太郎氏が「内閣府官房審議官に対応いただいたが、現状検討している以上の回答はなかった。省庁を横断して検討してほしいと伝えた。経産省の方は、ミニシアターの人と会うのは今日が初めて。実態をご存じない」と報告した。
さらに呼びかけ人のひとりである諏訪敦彦監督は、「結果から言うと、具体的な対応、アイデアについての話はなかった」と落胆し、次のように語った。
「厚労省では主にスタッフの雇用状態、何が必要かをかなりリアルに話した。生活衛生課に対応してもらったが、初めてリアルな声を聞けてよかったと言っていた。厚労省においては雇用助成金制度があるが、手続きに時間がかかる。海外では数日で振り込まれると伝えたが、具体的にどう変えていくという答えはなかった。
厚労省ではミニシアターを娯楽施設として捉えている。そこで、文化芸術的な意義があると伝え、それは受け止めてもらえたと思う。文化庁には、予算がかなり限られていると思うが、ミニシアターは文化芸術拠点として支援するべきであり、それを行えるのは文化庁だと訴えた。
終息後に至るまでできることはないのか。文化庁は製作を援助しているが、上映は別のところが所轄するのはおかしいのではないかと話した。平時からミニシアターを文化庁が管轄するべきだった。ポジティブな話はできたが、今日明らかな回答は得られなかった。今後も話し合いを続けていきたい」
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