株価はコロナ死者数が減れば上がり続けるのか 市場は経済正常化への道を判断できていない

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感染拡大が急ピッチで起きたニューヨークでは、強力な政策対応によって、感染拡大に歯止めがかかるかもしれない。ただ、アメリカの他の都市において、今後感染者が増え始める可能性が残っている。こうした展開となれば、アメリカ株に対する市場心理は再び悲観方向に揺れ動くだろう。

そして、今後想定される経済封鎖の解除措置(経済活動再開)を、ウイルス感染、医療体制拡充状況などを踏まえて、トランプ政権は判断するとみられる。一方、人との距離を保つという厳しい公衆衛生政策をアメリカ国民にどの程度徹底させることができるかという問題もあり、経済活動再開の判断は不確実性が大きく、そして難しい。

アメリカ株式市場は夏場までに2番底をうかがう

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民主主義の政治体制を保つ先進国は、経済活動の正常化を相当慎重に進めざるを得ないと思われる。大統領選挙を控えたトランプ政権は難しい判断に迫られ、経済活動再開の判断の時期を間違えて、感染被害が再び深刻になる展開も十分想定できる。

最終的には、ワクチン開発や症状を改善させる医薬品が早期に登場しなければ、アメリカの経済再開への道筋は時間がかかり、トランプ政権の試行錯誤が続くだろう。このため、2020年のアメリカの経済成長率は、2008年のリーマンショック後を大きく超えるマイナス成長になると筆者は予想している。

リーマンショック後の2009年以降は、金融システムに大規模な資金を投入すれば、経済活動はスムーズに正常化した。現状は当時と異なる側面がいくつもある。現在のアメリカの株式市場は楽観方向に傾いているように見えるが、この認識が正しければアメリカの株式市場は夏場までに2番底をうかがうことになるだろう。

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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