コロナの影響で「葬儀」はどのように変わるのか 悲しみとの折り合いをつける「グリーフケア」

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アメリカで心理学や認知科学などに基づくグリーフケアを学んだ橋爪さんは、大切な人を亡くした人やその周囲の人の、誰にも言えずに閉じ込めた気持ちを誰かに聞いてもらいたいというニーズに応えるため、グリーフの知識を備えたカウンセラーや葬祭スタッフなどの人材教育を行っている。

葬祭スタッフにグリーフサポートの知識があれば、遺族の心の状態を把握しながら故人への思いを引き出し、それを葬儀に反映することができるようになる。すると、遺族は葬儀の打ち合わせの中で、少しずつ心の整理がついてくる。

「グリーフサポートは、日本でいう一周忌、三回忌といった、『供養』の機会に宗教者が行っていたことに近く、法要では僧侶による読経だけでなく、相談事を聞くカウンセリング的な役割があったと考える。普段はなかなか顔を合わせない親戚が集まり、故人の思い出話をする貴重な機会だったのだろう」と橋爪さんが話すように、葬儀だけでなく法要も、悲しみと折り合いをつけるという役割を担っていたようだ。

多様化する「お別れ会」

そうした役割を、葬儀が充分に果たせなくなったことから誕生したのが「お別れ会」だ。

「お別れ会」は、1994年にホテルオークラ東京が開いた「故人を送る会」が始まりだといわれている。当初は会社の役員や芸能人など、著名人が開くものとして広まったが、2010年頃には「お別れ会」をプロデュースする葬儀社や企業が全国各地で見られるまでに一般化した。

「お別れ会」が浸透し始めた2010年頃の主催者は大半が遺族だったが、近年では葬儀が家族葬だったために参列できなかった故人の会社関係や学生時代の交友関係、趣味で知り合った関係者など、家族以外の人が家族の了承を得て主催者となるケースが増えている。

2015年にお別れ会事業部「Story」を立ち上げた鎌倉新書のプロデューサー、井野貴亮さんによると、「『お別れ会』を開く動機は、主催者がご遺族の場合は、『生前の感謝を伝えたい』というものが大半。ご遺族以外の場合は、『お世話になったので、きちんとお別れをしたい』というものがほとんど。『何人集まるかよりも、主催者の思いの強さのほうが重要』」だという。

細かい段取りや礼儀作法などで画一化され、故人の死後数日のうちに、打ち合せから火葬まで慌ただしく行われる葬儀と違い、「お別れ会」は「故人や家族が何がしたいか」「故人はどんな人だったか」がベースにあり、宗教やしきたりにとらわれず、主催者の希望を優先した形で行われ、最初の相談から会当日まで、数週間〜数カ月間準備に費やす。

主催者は、最初の打ち合わせのときは気落ちした様子でも、打ち合わせや準備を通して気持ちが整理され、表情が明るくなっていく。

「『偲び足りない』という思いから始まった『お別れ会』だが、最近は、故人に縁のある人たちが集まり、『どうやって送り出そうか』を考える方向へシフトしているほか、存命中に家族から相談されるケースや、本人からの相談なども増えており、『お別れ会』という概念が多様化している」と、井野さんは話す。

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