いずれにしても、家族葬や直葬(火葬式)は、参列できる人の幅を狭め、「葬儀に参列したい」という意志の有無にかかわらず、参列できない人を生み出してしまう。
参列できなかった人は、本来なら葬儀の場でできたはずの、気持ちの整理をつけたり、悲しみの感情を表現することができない。
悲しみの感情を抱えたままでいると、精神や身体だけでなく、その後の人間関係や人生にまで影響を及ぼしてしまうこともある。
「グリーフケア」「グリーフサポート」とは
葬儀で成されるはずの「気持ちの整理をつけること」や、「悲しみの感情を表現すること」は、「死別の現実を受け止め、悲しみとの折り合いをつける」ということにほかならない。
心にある「悲嘆=グリーフ」を癒やすことを、「グリーフケア」。悲嘆を抱える人を側で支えることを、「グリーフサポート」という。
2004年からグリーフサポートに関する事業を展開しているジーエスアイの代表、橋爪謙一郎さんによると、
「『自分らしさ』という個性は、周囲との関係で作られている。そのため、大切な人を亡くしたときに襲われる喪失感は、その大切な人にもう会えないという悲しみだけでなく、その人と関わることによって生まれた『自分らしさ』を形成するさまざまなものが、『もぎ取られた』ような状態になることによって得られるものだ」という。
こうした喪失体験に加え、「人前で涙を流してはいけない」という思い込みや、「あなたがしっかりしないとダメだ」といった周囲の言葉などによって、心に蓋をされたような状態になり、素直に感情を表に出せなくなってしまうこともある。
↓
大切な人との思い出を共有する
↓
周りからのサポートを受ける
↓
抱えた悲しみを受け止めてもらう
↓
人生の意味を考える
↓
悲しみとの折り合いをつける
これは、橋爪さんの師であるグリーフ研究の第一人者 アラン・D・ウォルフェルト博士が提唱している理論を図に表し、橋爪さんが和訳したものだ。「悲嘆=グリーフ」を癒やすには、上記のように、6つの要素を満たしていく必要がある。
必ずしも順番通りに行う必要はなく、「死別の現実を受け止める」から「人生の意味を考える」を行ったり来たりしながらでも大丈夫だが、「死別の現実を受け止める」ことをまったくしないままでは、「大切な人との思い出を共有する」ことは難しく、先には進めない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら