新型コロナ危機でインフォデミックが危ない 高齢者も含めデジタル利用も急速に拡大する
ここには集団心理も働いているだろう。先ほどSNS発の情報に対する信頼度が低いことを示したように、これらの情報を心から信じる人はむしろ少数派で、多くの人が疑ってかかったはずである。むしろ有名な「ケインズの美人コンテスト」的なメカニズムが起こったと考えるべきである。
ケインズの美人コンテストとは、「100枚の写真の中から最も美人だと思う人に投票してもらい、最も得票数が多かった人に投票した人たちに賞品を与える新聞投票」 である。この場合、各人は、自分自身が美人と思う人へ投票するよりも、ほかの多くの人が投票すると思われる人を予測して投票する。つまり自分の考えよりも他人がどう行動するかを予測して自分もそれに合わせるということだ。
今回のケースに当てはめるならば、「自分自身はトイレットペーパーが不足するとは思わない。しかし世間の少なくない人がそれを信じるとしたら、多くの人が買いに行って、お店からトイレットペーパーがなくなる可能性があるから、自分もその前に購入しておこう」ということになる。つまりフェイクニュースの恐ろしい点は、自分自身はそれを疑っていたとしても、他人の行動を予想する過程で自分もそれに乗ってしまう可能性があるということだろう。
世界中でインフォデミックのリスク高まる
新型コロナウイルス感染拡大後、日本人の多くは自身・家族の健康だけでなく、雇用や収入、社会保障制度の破たんなど先行きの見えないことで、不安感が高まっている状況であり、食料品や飲料品、医薬品等の生活必需品の購入意欲が高い状態にある。このような状況では、一つの些細なフェイクニュースや誤情報によって、生活必需品の買い占め騒動が極めて発生しやすい状況にある。
実際に、修正後 実際に、人命にかかわる事態となったケースがある。アメリカでは、トランプ大統領がマラリア治療に使われるクロロキンがウイルス対策に有効であると話したところ、アリゾナ州に住む高齢者が(クロロキンを含む)水槽用の洗剤を飲んで死亡するという事件が発生している。
世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルスに関する誤情報、偽情報の世界的な拡散を「インフォデミック」とよび、新型コロナウイルスの感染大流行(パンデミック)と同様に、人々の生活や命に甚大な影響を及ぼすとして強い警鐘を鳴らしている。
アメリカでは新型コロナウイルス関連のフェイクニュース封じ込めのために、フェイスブック、グーグル、リンクトイン、ツイッター、マイクロソフトなどの大手テクノロジー企業が共同声明を発表した。グーグルは、加工された偽画像を検知する技術を開発するなど対応を進めている。