「子どもと会えない」医療従事者たちの苦悩 アメリカで深刻化するコロナと親権問題

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新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、多くの医療従事者などが子どもと会えない、という新たな問題に直面している(写真:Stephen Speranza/The New York Times)

ニュージャージー州の医師、バーサ・メイヨークインは先月、近く離婚が決まっている夫に仕事の計画に変更があったと告げた。同医師は新型コロナウイルスに感染するのを防ぐため2週間にわたりオンライン診療を行ってきたが、対面での診療を再開することになったからだ。

ところが金曜日に仕事を終えて、週末を一緒に過ごすため2人の娘を迎えにいくと、夫のウェンデル・スルドゥコウスキーから裁判所の命令を見せられた。幼い娘たちの単独親権を当面の間、父親に付与するものだ。夫の弁護士が裁判官を次のように説得したのだった。メイヨークインは11歳と8歳の娘を新型コロナ感染の危険にさらす可能性がある——。

内科医をしているメイヨークインは、次女の誕生日を祝って週末を一緒に過ごす予定だった。ところが、裁判所命令の取り消しを求めるため、週末に50ページもの書類を必死でとりまとめるはめになった。

人を助ける仕事をしているだけなのに…

「私もそうだが、病院で働く医師や看護師の多くは子を持つ親だ」。新型コロナの感染が爆発的に広がる中、メイヨークインは緊急医療センターの負担を軽減するため、新型コロナ以外の患者を診るよう病院から頼まれていた。「人を助けるために最前線で働いているのに、子どもを取りあげられなくてはならないのだろうか」。

似たような疑問の声は全米各地であがっている。感染を恐れた元配偶者やパートナーから子どもとの面会を拒絶される人たちが増えているのだ。中でも物議を醸しているのが、医療従事者や生活に欠かせない仕事に従事している人たちの扱いだ。

一方では、重要な仕事をしていることを理由に不利益を被るのは間違っているという声がある。しかし、その一方では、そうした仕事のために他の家族は大きな危険にさらされることになるのだ、と反発する声もある。

「薬物だろうがウイルスだろうが、子どもの健康に差し迫った危険があれば、手を打たなければ」とスルドゥコウスキーは語る。「ニュースでは、医師がウイルスに感染し、発症する例も目にする。高いリスクがあることは否定できない」。スルドゥコウスキーには基礎疾患があり、自分自身の健康も心配だと裁判官に述べた。

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