「子どもと会えない」医療従事者たちの苦悩 アメリカで深刻化するコロナと親権問題

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裁判所に助けを求めても、親に返ってくる反応はまちまちだ。大半の機能を停止している裁判所もあれば、緊急の審問をオンラインで行っている裁判所もある。それに、ある管轄区域における「緊急事態」の定義が、他の管轄でも通用するとは限らない。

4月初旬、ムーア弁護士のクライアントの1人、オーランド郊外に暮らすタバサ・サムズは1歳9カ月の息子の親権をこれ以上、父親のスティーブン・ティルモニーと安心して共有することはできないと思い至った。父親のティルモニーは消防士で、救急活動にあたっているからだ。

「運任せなんてできない」

看護師をしているティルモニーの婚約者も、救急救命室で働いている。ティルモニーは、自分も婚約者も勤務中は防護具を着用するなど適切な安全対策を行っていると説明し、サムズを安心させようとした。が、サムズは新型コロナの感染がアメリカ中で急速に広がるのを見て、不安を募らせていた。

サムズの不安はついに限界に達した。サムズが振り返って言う。「『こんな状態では安心できない』と言った。『運任せになんてできない』って」。サムズは弁護士の助言に基づき、裁判所に緊急の申し立てを行った。州の自宅待機命令が出ている間、単独親権を自分に与えてほしいという申立てだ。

裁判所は、両親がともに出席し、準備に十分な時間が取れるよう、オンラインで審問を行う手はずを整えた。

ニュージャージー州では、代理人弁護士が申し立てを行ったその日に、スルドゥコウスキーが裁判所から緊急の審問を受けた。金曜日の午後遅い時間帯だ。メイヨークインさんの弁護士に電話で連絡がとれなかった段階で、判事は単独親権を一時的にスルドゥコウスキーに与える命令を下した。

メイヨークインは、このままでは娘たちと引き離されると取り乱したが、すぐに娘たちを取り戻す準備にとりかかった。彼女はポイントとなる点を列挙していった。自分は新型コロナの患者を治療する予定はない。

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