「子どもと会えない」医療従事者たちの苦悩 アメリカで深刻化するコロナと親権問題

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家族法は州によって異なるが、新型コロナの感染拡大によって問題はいっそう複雑になった。感染リスクをどう扱うのか、ガイドラインがまったくといっていいほど整っていないからだ。影響は医療従事者の家族にとどまらない。医療従事者以外の親の間でも、どちらがどちらの家を訪問するのか、子どもを外で遊ばせるべきか、遠くへの旅行は許されるのか、といった問題をめぐって争いが起きている。

「子どもと面会できる方法を探るよう勧めている。救急隊員がいるケースなら、どうやったら面会が最大限可能となるのか、その解決策を見つけるということだ」と、法律家団体「アメリカ婚姻法弁護士アカデミー」のスーザン・マイヤーズ所長は話す。「(医療や救急活動に従事している人たちに)これ以上の犠牲は強いられない。問題は、親権と安全をどう両立させるかだ」。

ニューヨーク州はガイダンスを出していない

コロナ危機を受けて対応方針を示している裁判所もある。例えば、テネシー州デイビッドソン郡の州地方裁判所は、自宅待機命令の発令から4時間以内に「子どもに主たる住居を提供する親」が子を監護し、命令が解除されるまで単独監護権を保持するとした。

マサチューセッツ州遺言検認・家庭裁判所の裁判長は公開書簡の中で、監護契約に同意した両方の親と子どもが過ごせるようにすることは大切だと述べた。どちらかの親に自己隔離や接触を制限する必要が出てきた場合には、テレビ電話や通常の電話で子どもとの時間を持てるように双方の親が協力し合わなくてはならない、という立場だ。

だが、これらは、片方の親が医療などの最前線で働き続けなければならない場合にどうするべきかという疑問に直接答えてくれるものではない。

アメリカでコロナ感染の中心地となっているニューヨーク州の裁判所は今のところ、子どもの監護権に関するガイダンスは出していない。

「判例や明確な指針があるようには見えない」と、フロリダ州で親権問題を扱うコンティ・ムーア弁護士は語る。「パンデミックの時に、どのようにして共同で子どもを養育するのか。こんな問題は、これまでに経験したことがない」。

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