ブラジル大統領コロナ対策に「超消極的」なワケ コロナは風邪のようなものと言って譲らない

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3月上旬は、まだ、ブラジルでは海外からの渡航が制限されることなく、春節で中国に帰国していた中国人が続々と戻り、イタリアやヨーロッパ各国からはたくさんの飛行機が往来し、海外からの人々の入国は続いた。

中旬頃から、感染者が急激に増え、数人の死者も出始めた。それ以来、まさにあれよ、あれよと増え、指数関数的な急激な増加であった。4月12日時点で、感染者数2万964人、死者は1141人に達した。ついひと月ほど前には、感染者数は1ケタ、死者はいなかったのに、だ。

コロナは「ちょっとした風邪」と譲らず

「ブラジルのトランプ」と呼ばれるボルソナロ大統領は、コロナウイルスを「ちょっとした風邪」「あらゆる病気の最大の治療法は仕事だ」と言いきり、経済活動を重視している。この点で、「第一に人々の生命、次に経済」という考えの保健省の大臣や各州の州知事と相反している。

特にサンパウロ州知事とリオ・デ・ジャネイロ市長は商業施設閉鎖令や外出禁止令を発令し、イベント会場やサッカー場などに仮設の入院施設を作るなど、コロナウイルスの爆発的拡散に備えてきた。それでも、現時点では感染爆発を抑えきれていないわけだ。

外出禁止令と商業施設閉鎖令が出てからというもの、交通量は50%減り、通行人も激減。セントロのほとんどの店がシャッターをおろし、人通りが消えたために、路上生活者と清掃人、そして巡回する騎馬警官がやけに目につくようになった。

この機を利用して、店の改装や建物・道路の修復工事などが行われている。そのおかげでセントロを歩いても、意外に人がいるので、普段は治安が悪い地域であっても怖く感じることはない。コロナウイルスが猛威を振るう中でも、しっかりと一部の経済活動は続けられているのだ。しかし、大多数の商店は商品が売れず大打撃をうけ、完全に店を閉じてしまったところもある。

セントロ付近の住宅街では、ジョギングや犬の散歩をする人々を多く見かけられるようになった。テレビなどでも、密閉された空間でたくさんの人が集まるのは危険だが、1日1回、外にでて軽い運動をすることは推奨している。

この付近は治安が悪いため、普段ジョギングをする人はほとんど見かけないが、スポーツジムやクラブなども閉鎖されているので、午前10時ごろになると、自転車に乗ったり、ジョギングする人の姿を見かける。犬の散歩をする人も多く、一見すると、まるでのんびりとした日曜日という感じさえうける。

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