防衛記者クラブの「台所事情」何とも厳しい実態 不要不急の支出、財政破綻の危機を迎えていた

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記者クラブでは幹事社が1カ月ごとの持ち回り制だ。だが、これでは明確な代表者を置いていると言えるだろうか。町内会やマンションの管理組合でも月ごとに責任者が変わったら運営には支障が出るだろう。運営システムからも記者クラブは当事者能力をもっていないようなものだ。だからこのようなずさんな金銭管理が長年放置されてきたのではないかと筆者は思う。

同行取材の交通費を肩代わり?

一方で、これらよりもっと大きな問題がある。大臣外遊の際の同行取材の交通費を報道室員に個人的に肩代わりさせていることだ。

「現在は大臣外遊に伴う現地作り上げバス代等の『外遊』について報道職員『個人』に立て替えていただいていますが、その額は数十万円単位で、報道室員の大きな負担となっています。これを、記者会にて立て替え、各社から記者会に入金いただく形に是正するためにも、預金残高の改善が必要です(「防衛記者会の財政改革について」)」

筆者は本年2月28日に開かれた河野太郎防衛大臣の定例記者会見でこのことを大臣にただしたが、大臣も「それはいかがなものかと思います」と返答している。

防衛省による防衛記者会に対する利益供与が疑われる問題もある。防衛省のA棟の記者会室、会見室、会見控室、D棟にある記者会室などの記者会が使用している部屋の家賃、管理費、光熱費は資料を見る限り支出に入っていない。記者会をケアする防衛省の連絡官2名の人件費も防衛省が負担している。これらの費用は毎月100万円を超えているだろう。

これを放置して、メディアによる権力の監視になるのだろうか。筆者は財政破綻危機を含めた、これらの件に関して防衛記者会幹事社に3月2日に取材を申し込んだ。「会員各社と相談する」ということだったが、いまだに連絡がない。

清谷 信一 軍事ジャーナリスト

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きよたに しんいち / Shinichi Kiyotani

1962年生まれ、東海大学工学部卒。ジャーナリスト、作家。2003年から2008年まで英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』日本特派員を務める。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関Kanwa Information Center上級アドバイザー、日本ペンクラブ会員。東京防衛航空宇宙時評(Tokyo Defence & Aerospace Review)発行人。『防衛破綻ー「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『専守防衛-日本を支配する幻想』(以上、単著)、『軍事を知らずして平和を語るな』(石破茂氏との共著)など、著書多数。

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