中国の動画配信大手「iQIYI」に不正会計疑惑 ショートセラーが告発し、中国株全体に不信

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不正会計疑惑が浮上した動画配信大手のiQIYIは「中国版ネットフリックス」と持て囃されていた(写真はiQIYIのウェブサイト)

新興カフェチェーン瑞幸珈啡(ラッキン・コーヒー)で深刻な不正会計が発覚してから1週間も経たず、今度は動画配信大手の「愛奇芸」(iQIYI、アイチーイー)で疑惑が浮上した。

4月7日、アメリカの投資会社ウルフパック・リサーチは、iQIYIが「売上高や会員数を水増ししている」などと告発する37ページの調査リポートを発表した。ウルフパックは、疑わしい銘柄のリポートを出すと同時に空売りをかける「ショートセラー」として知られている。

今年1月末にラッキンの不正をいち早く指摘した同じくショートセラーのマディ・ウォーターズは、今回のウルフパックの調査に協力したと明かした。iQIYIはアメリカのナスダックに上場しており、海外市場で取引される中国株全体に不信が広がっている。

営業実態ない会社を325億円相当で買収?

ウルフパックは主に4つの疑いを提起した、1番目はiQIYIが1日当たりのアクティブユーザー数を42~60%過大に報告していること。2番目は売上高の水増しで、具体的には繰延収益の不正計上、会員数の重複カウント、スポーツ・コンテンツ配信の「新愛体育」に対する投資収益の捏造などだという。

3番目の疑惑は、売り上げ水増しから生じるバランスシートの矛盾を隠すための費用のかさ上げ。営業実態のないゲーム会社を異常な高値の3億ドル(約325億円)で買収した案件や、連続ドラマの配信権を市場価格よりはるかに高い価格で購入したことなどを挙げた。

最後の4番目は版権購入費用の会計処理を操作し、フリーキャッシュフローを実際よりも多く見せかけた疑いだ。これらの指摘に対してiQIYIは、「当社が開示するすべての財務および業務データは真実であり、SEC(アメリカ証券取引委員会)の要件を満たしている」と直ちに全面否定した。

本記事は「財新」の提供記事です

iQIYIの株価はウルフパックのリポート発表後に一時13%以上急落。しかし否定声明をきっかけに持ち直し、4月7日の終値は前日より3.22%高い17.30ドル(約1876円)で引けた。その後の時間外取引では再び3%以上下落した。

iQIYIの決算報告書によれば、2019年10~12月期の売上高は75億元(約1157億円)と前年同期比6.69%増加し、アナリストの予想を上回っていた。しかし10~12月期の営業損失は25億元(約385億円)、2019年通期の営業損失は93億元(約1432億円)と、以前より改善したものの赤字体質から脱却できていない。

(財新記者:劉爽爽、張之林)
※原文は4月08日配信

財新 Biz&Tech

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