新型コロナウイルスの世界的大流行を背景に、マスクやゴーグル、防護服などの防疫資材を中国から海外へ大至急輸送する動きが急増。国際航空貨物の需給が逼迫し、運賃が過去にない水準に高騰している。
「平時なら1キログラム当たりの航空貨物運賃は10元(約153円)以下だが、3月の平均運賃は50元(約765円)を超えた。マスクなど単価が安い一部の貨物は、生産価格よりも運賃のほうが高くなっている」。スイスの国際物流大手キューネ・アンド・ナーゲルの中国法人のある社員は、財新記者にそう証言した。
運賃高騰の裏には、需要急増のほかにもうひとつ要因がある。新型コロナの流行拡大が続く海外からウイルスが流入するのを防ぐため、中国政府が3月29日から中国を発着する国際航空便数を大幅に縮小する措置を取ったことだ。
中国と外国を結ぶ便は1国当たり1路線に絞られ、航空会社ごとに週1往復までに制限されている。その結果、週当たりの国際便数は約130往復と、それ以前より9割近くも減った。
航空貨物輸送の4割は旅客便に混載
航空貨物輸送には陸運や海運にはない特徴がある。貨物専用機による輸送に加え、一般の旅客機の貨物室にも乗客以外の貨物が混載されている。後者の比率は航空貨物輸送全体の4割近くを占める。
そんななか、当局の規制で旅客便のフライトが激減したため、貨物の輸送力のキャパシティが一気に不足。運賃に強い上昇圧力がかかっているのだ。
「現在の運賃は例年の3倍以上だ。3月下旬以降は(1キログラム当たりの運賃が)毎週1ドルのペースで上昇している」。アメリカの国際物流大手CHロビンソン・ワールドワイドの中国法人幹部は、財新記者にそう語った。マスクなどの防疫資材を中国から空輸するため、各国政府が先を争って貨物機をチャーターしていることも運賃高騰に拍車をかけているという。
とは言え、中国の大手物流企業のある管理職は「現在のような状況は長続きしない」と指摘する。防疫資材の輸出特需はまだ数カ月続くかもしれないが、海外の新型コロナ流行もいずれは落ち着く。また同時に、各国は防疫資材の国内生産態勢づくりを急ピッチで進めているからだ。
中国では企業の全面的な操業再開が遅れており、産業資材の空輸需要は低迷が続く。防疫資材のブームが去ったときに国内景気の回復が十分でなければ、航空貨物業界は需要減少と供給過剰のダブルパンチを受けかねない。
(財新記者:賈天瓊、孫良滋)
※原文は4月4日配信
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