テレビ局の番組制作"凍結"で見えない活路 ゴールデンタイムを再放送でしのぐ異例の事態

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現在のところ、民放各社はすべての番組収録を中止しているわけではない。「3密(密閉、密集、密接)を避けるなど、安全を確保できると判断した番組は収録を行っている。例えば『ヒルナンデス!』は、司会者1人がスタジオに登場し、残りの出演者はリモートで出演している。ただ、ドラマなどはスタッフが多いこともあり、原則中止している」(日本テレビ広報担当者)という。

コロナショックに直面した企業の最新動向を東洋経済記者がリポート。上の画像をクリックすると特集一覧にジャンプします

ドラマの撮影中止によって、一部番組では放送の延期も発表されている。日本テレビの「ハケンの品格」は収録休止に伴い4月15日の22時に予定していた初回放送の延期を発表。フジテレビでも新ドラマ「アンサング・シンデレラ」の初回放送(4月9日の22時)を延期し、2018年に放送した「グッド・ドクター」の再放送に切り替えた。視聴率が高いゴールデンタイムでの再放送は異例の事態と言える。

制作がストップすると、新たな番組作りに関連する経費は発生しないが、再放送への差し替えに伴う広告出稿の影響が懸念される。ある広告代理店関係者は、「特定の番組に紐づくタイム広告の場合、予定通り新番組が放送されず、過去の別番組が再放送されると”契約不履行”となり、(企業などの)クライアントが広告出稿を取りやめる可能性もある」という。

TBSは新番組の開始時期が一部未定

ドラマ制作で休止が相次ぐ一方、バラエティ番組は、過去の放送分で視聴者から反響の大きかったものを再構成するなど、新たな収録がなくても番組を続ける形が模索されている。

ただ、新番組となるとそうはいかない。TBSの場合、4月から月曜日のゴールデンタイムで4つの新番組がスタートする大幅な入れ替えを行った。だが、4月4日から19日までドラマのほかバラエティ番組のロケやスタジオ収録などを見合わせているため、4つの新番組はスペシャル番組後の放送日が未定だったり、内容を変更するなどしている。

2020年2月は在宅勤務者の増加などによって、テレビの視聴者数は増え「HUT(総世帯視聴率)が上がっている」(テレビ東京の子孫社長)という。こうした状況はほかのテレビ局にも言えることだろう。

だがそれでも、景気悪化から広告出稿が落ち込んだり、番組制作が相次いで休止になったりするリスクは変わらない。テレビ局各社は、コロナショックの影響とその対応策にいっそう頭を悩ませることになりそうだ。

井上 昌也 東洋経済 記者

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いのうえ まさや / Masaya Inoue

慶應義塾大学法学部政治学科卒業、同大メディア・コミュニケーション研究所修了。2019年東洋経済新報社に入社。現在はテレビ業界や動画配信、エンタメなどを担当。趣味は演劇鑑賞、スポーツ観戦。

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