保険嫌い夫婦が悩む「急病で生活破綻」の確率 健保のみでは補えない長期休職が増えている

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しかし、傷病手当金についての2人の認識は「結構な金額がもらえるらしい」という程度でした。そこで、具体的な数字を示しました。仮に給与が40万円であれば、社会保険料が約15%、所得税と住民税で約7%です(給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除後の税金)。すると可処分所得は31万円ほどになります。

傷病手当金は、病気やケガで働けなくなった場合、4日目から標準報酬日額の3分の2が支給されます。もし1カ月休職すれば、手当金は約26万円になります。この手当金は非課税ですが、社会保険料は支払わなければなりません。通常給与40万円にかかる15%で6万円が差し引かれて、可処分所得は20万円となります。

「1カ月休職した場合の手当金は、普段の手取りより11万円も少ない……」と奥様。「給与と同じくらいの金額をもらえるようなイメージがありましたが、これだと家賃の支払いも厳しくなりますし、医療費も上限があるとはいえ、この金額でやりくりしなければいけないと考えると、少し不安です。やっぱり、医療保険には入ったほうがいいのかしら……」と迷い始めました。

保険とは、収入と貯蓄では賄えない損失を補うもの

万一の経済的なリスクに備える方法は、大きく3つあります。家族の就労収入、貯蓄の取り崩し、そして保険です。

中でも保険は、就労収入や貯蓄取り崩しでも追いつかないような大きな損失をカバーする方法としてとても適しています。例えば、車を運転する人であれば、自動車保険には必ず加入します。なぜならば、事故を起こして他人を死傷させた場合、自賠責保険(強制保険)だけでは多額の賠償金の支払いができないからです。一方で、少しくらい車体を事故などで傷つけても手持ちのお金で払えると思えば、車両保障を外したりします。

医療保険も考え方は同じです。もし、ご主人が趣味のスノーボードで転んで骨折し、1カ月休職しても、その程度の経済的損失は貯蓄の取り崩しで賄えるでしょう。

もちろん、どんな目的にも使える「貯蓄」があることが大前提ですが、今回の夫婦にはある程度の蓄えがあり、「短期で回復するような病気やケガに備えるための医療保険は不要」と考えました。これから病気やケガをして、就労収入や貯蓄取り崩しでも追いつかないような大きな損失を被ることは考えにくい、という理由もありました。

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