経済学者が成長より「善と悪」を考えるべき理由

欧州と日本がざわついたチェコ人学者の提言

経済成長は本当に人類を幸せにするのでしょうか?(写真:Sergey Nivens/PIXTA)
21世紀を生きる私たちの間で、経済成長は本当に人類を幸せにするのかという問いが重みを持ち始めている。
そんななか「成長資本主義」の弊害を語り、成長を至上命題としてきた経済学を真っ向から批判する学者が現れた。NHK「欲望の資本主義」シリーズ(書籍では『欲望の資本主義』『欲望の資本主義2』)にも登場したチェコの若き俊英、トーマス・セドラチェクだ。
ロングセラーとなっている彼の著書『善と悪の経済学』でセドラチェクが私たちに伝えたかったメッセージを、抜粋・編集してお届けする。

人間は物語によって世界を理解してきた

人間は、自分を取り巻く世界を何とか理解しようと絶えず試みてきた。そのときに役立つのは、物語である。物語は、現実に意味を与えてくれる。
現代の人々の目には、そうした物語は時に古くさく映るかもしれない。ちょうど私たちの物語が、将来世代には古くさく感じられるように。だが物語に潜む力には、奥深いものがある。

『善と悪の経済学』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら)(セドラチェク氏が出演するBS1スペシャル シリーズ コロナ危機「グローバル経済 複雑性への挑戦」はNHKBS1にて、4月25日(土)午後3時より再放送されます)

経済学も、そうした物語のひとつである。この物語はずっと昔に始まった。はやくも紀元前4世紀には、クセノポンが「たとえ財産をまったく持っていない人でも、家計の管理はする」と書いている。かつて経済学は家計を管理するための知識だったが、やがて宗教学、神学、倫理学、哲学といった学問の一部に組み込まれた。

しかし徐々に、これらの学問とはまったく異質なものに変化していったように見える。経済学はいつの間にかその微妙な陰影や色彩を失い、時に技術的・官僚的で白か黒かの世界だと感じられることがある。だが経済学の物語は、もっと彩り豊かだ。

経済の研究が科学の時代になってから始まったと考えるのは間違っている。昔の人々もいまの私たちと同じような問いを発していた。その問いに最初に答えたのは、神話と宗教だった。

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