ベストセラー脳科学者が強くダンスを推す理由 「ブレイン・ルール」に見る人生を楽しむ秘訣

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ダンスにもいろいろあるが、タンゴ、ジャズダンス、サルサ、フォークダンスなど種類は問わないという。また、太極拳やその他武術などのパターン化された動きを習うことによっても、同様に多くの能力が向上するとされている。

さらに、これらの運動に参加した高齢者は転倒しづらくなり、とくに週に1度の太極拳に参加したグループでは、転倒の回数が37%も減ったと報告されているのだ。

メディナ博士によれば、ダンスを通して、いかに社交性を高めるかということに、脳の機能を向上させるポイントがあるという。

社交性と認知機能との間に強い相関があることは、すでに数々の研究によって科学的に裏付けされている。

6年間にわたって1万5000人以上の記憶力の低下率を調査したある有名な研究では、社交的な人の記憶力の低下率は、社交的でない人の半分にとどまっていた。また、認知症でない高齢者を調査すると、最も社交的なグループは、最も社交的でないグループに比べて認知機能の低下率が70%も低いというのだ。

また別の研究では、たった10分、他者と交流しただけで、脳の情報処理能力とワーキングメモリが向上するとされており、これはビデオチャットでも有効なものらしい。

自分とは異なる見方を理解しよう

ただし、他者との交流にも、ドーパミン分泌と関係するポジティブな交流と、ストレスホルモンと関係するネガティブな交流がある。

ストレスは知力を含む身体活動全般に負荷を与えるものだが、とりわけ免疫系には影響を与えるという。ストレスホルモンの濃度が高まると、切り傷の治癒や、風邪、インフルエンザウイルスなどの侵入者と戦う武器である「T細胞」が死んでしまう。つまり、感染症に対しても弱くなるのだ。

実際、結婚生活がぎすぎすしているなど、ネガティブな人間関係があり、慢性的なストレスを抱えている人は、傷の治癒までに1.4倍の時間がかかり、風邪も引きやすいらしい。反対に、日頃から外に出かけ、他者とポジティブに交際する時間の長い人は、風邪や病気にかかりにくいという。

つまり、他者と心地よく過ごそうというポジティブなマインドで、人間関係を作る必要があるということだ。

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