日本も金融・財政政策では、すでに政府や日本銀行が欧米各国と同様の大規模化を推進中だ(「コロナ対策『10万円給付』案が検討されるわけ」)。一方、戦場である医療と国民総動員の部分では、欧米と比べれば、相対的に感染拡大が緩やかだったため、まだ平時に近い体制が続いていた。
だが、今週からより一般国民の生活に近いところで大きな変化が起きようとしている。それでは、対コロナの「戦争計画」に該当する、感染症法と特措法の状況を見てみよう。
軽症者のホテルなどへの移送が始まる
これまでの医療上の対応では感染症法に基づき、帰国者・接触者相談センターと帰国者・接触者外来が、患者の入り口部分を担当したうえで、ウイルスの感染が認められた場合は、無症状・軽症者を含めて全員を感染症指定医療機関に入院させてきた。
だが、東京都など一部の都道府県はすでに累計の感染者数が感染症指定医療機関の病床キャパを優に超えてしまった。そのため、ICU(集中治療室)を持つ中核病院を中心に医療従事者や設備・装備品の感染症対応を進めてもらって、受け入れ病床の拡大を図ってきた。すでに感染症法の想定を超える事態が起きていたわけだ。
状況が変わったなら計画は改める必要がある。コロナ患者が病院からあふれ出す危険に対し、厚生労働省はかねて、次の手として、治療が不要の無症状・軽症患者をホテルなど宿泊施設での療養や自宅療養に移行させる考えを示してきた。限られた医療資源を重症者への対応に集中させるためである。
4月2日、ついに厚生労働省はその具体的なガイドラインを提示。今後は都道府県ごとの判断で実行に移されていくフェーズに入る。感染者増が最も深刻な東京都は4月6日以降、「ホテルを1棟丸ごと借り切るなどして、軽症者の宿泊療養のモデルケースを始める」と、小池百合子知事は4月3日の会見で語った。「地域の医師会とも連携しながら、(宿泊療養者の)ケア体制も調整している」(小池知事)。
このような軽症者の宿泊療養や自宅療養への移行は、戦場(医療現場)が非感染の一般の国民生活の近くまで押し寄せていることを意味する。欧米で本格化している仮設病院の日本版の始まりだ。
さらに今後、本当に感染爆発が起きてしまい、重症者までもが医療機関からあふれ出す最悪の事態になれば、それは医療崩壊、感染症対策の敗北を意味する。医療関係者や政府・地方公共団体はそれを押しとどめるため、必死の戦いを進めている。
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