ダイハツ「タント」が、N-BOXに勝てないワケ 軽ワゴン史に見る「新しい価値」の重要性

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もしN‐VANがEVになれば、商用バンといえども静粛性や乗り心地が大幅に改善されるからだ。同時に、EVで懸念される走行距離についても、日々の走行距離がおよそ定まり、見えやすくなる分、問題視されない可能性も出てくる。それが、次世代のミニ・ミニバンかもしれない。

2018年に「N-VAN」は発売された(写真:本田技研)

なおかつ、N‐VANの床の低さであれば、福祉車両として幅広い利用が可能になるのではないか。それは、これからのユニバーサルデザインの核となっていくだろう。

たかが商用バンと思うかもしれないが、昨2019年にN‐VANは年間で4万2530台を売り、対前年比185.1%の伸びを示している。販売台数こそN‐BOXの17%でしかないが、伸び代はN‐BOXの対前年比104.8%をはるかに超えており、N‐WGNの3万2382台を上回る販売台数なのである。

軽自動車をEVにするには「リチウムイオンバッテリーの原価がまだ高すぎる」という声が、すぐにも聞こえてきそうだ。しかし、それこそが技術者、開発者の取り組むべき挑戦であり、存在価値ではないのか。ゼロから1を生み出す気概が求められる。

電動化で先行したスペーシアの価値

電動化も含め、いまもっとも成熟したスーパーハイトワゴンはスズキのスペーシアである。

「スペーシア」は全車にマイルドハイブリッドを採用する(写真:スズキ)

理由の一つは、当時でさえ高価だとされたリチウムイオンバッテリーを採用し、「エネチャージ」と呼ばれる電動化技術を2012年のワゴンRに採用したことが生きている。

あえて電動化に投資をすることで、その後の軽自動車各車にマイルドハイブリッドを採用でき、同様の技術は「スイフト」をはじめとした登録車にも波及した。それらの性能や快適性は、競合他車を凌駕するといっていい。

スーパーハイトワゴンの価値は消えないまでも、N‐BOXはもちろん、タントもスペーシアも、今のままではすでに新車に買い替える勢いを失っている。

現状のN‐BOXを超えるには、異常気象、高齢化、少子化、ガソリンスタンドの減少など「今」という時代が抱える生活や社会の不安を解消し、新しい暮らしを切り拓くことのできる希望的価値の提供が求められるのだと思う。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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