ダイハツ「タント」が、N-BOXに勝てないワケ 軽ワゴン史に見る「新しい価値」の重要性
4代目となる新型タントでは、地域に根差した活動と、高齢化社会という日本が将来的に抱えていく社会問題と対面しながら、バリアフリーの概念を商品に結び付ける取り組みが行われている。
それによって、フルモデルチェンジをした昨2019年は、11月にN‐BOXの台数を超え1月で2万台超の販売を記録した。
福祉車両においても新型タントは充実をはかり、後付けのステップや手すりなど、補助的な装備を追加できる自在性のある車両開発を行っている。ここには、販売店と顧客との結びつきを継続的に強化していこうとする視点も入っている。
ただの改良ではない新鮮味が必要
一方で、新型タントに試乗すると、クルマとしての新しい価値を感じにくいのも事実だ。
タントという価値が不要であるという意味ではなく、タントという価値はすでに先代モデルでも満たされているのではないか、との思いにさせられ、クルマとしての新鮮味に欠けるのである。
同じ意味で、2代目となり、なお販売が好調のN‐BOXでさえ、初代の継承でしかなく、改良版という以上の何かがあるわけではない。2代目へとフルモデルチェンジする直前、前任の浅木LPLに「2代目をどう思うか」と尋ねると、明確に答えず、ただ首をかしげるだけだった。浅木LPLの目にも、2代目の取り組みに物足りなさを覚えたのだろう。
したがって、3代目N‐BOXへ向けては、ミニ・ミニバンの価値は継承するとしても、そこに時代を反映した何かが加わらなければ、人気が崩れる懸念も残る。例えば、軽自動車の電動化という側面において、ホンダもダイハツも、スズキや日産、三菱に後れを取っている。
スズキのスペーシアも年間販売台数でN‐BOXに次ぐ2位を獲得する勢いを持つが、「スペーシアでなければ」という強みはない。クルマとして全方位で「よくできたスーパーハイトワゴン」という水準にとどまっている。だから、N‐BOXを抜くことができずにいるのだ。
もしN‐VANがEVで出てきたらと思うと、脳に刺激が走る。
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