ここまでやっても感染者が激増「イギリス」の今 不要不急の外出禁止、記者のいない記者会見

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いったん店内に入ってしまうとゆったりとした気分で買い物ができるが、レジに並ぶ際には、ここでもやはりほかの客と2メートルの距離を維持しなければならない。

外出禁止令が出ても、買い物や運動のために外出ができるが、車に乗って遠くまで出かけ、戸外を歩いた場合は禁止令違反になるのだろうか?

政府のガイダンスによれば、「可能であれば、地元付近にいること、付近の屋外の空間を使うこと。不必要な旅はしないこと」、とある。「公園やそのほかの公的空間で、2人以上で集まることを禁止する。警察はこれを実行させる」とも。

そこで、イングランド地方中部ダービシャー州の警察はドローンを使って、管轄内の自然公園に来た人が駐車した車や犬を連れて歩く人を撮影し、ソーシャルメディアで「こんなことをやってはいけない」と注意を喚起した。

車に乗って遠出をして出かけたことはおそらく事実だろうが、外出の際には他者との距離を置くという決まりは守っていた。このような形で人目にさらすとは、「まるで監視国家だ」と批判を浴びてしまった。

記者会見室には記者の姿なし

3月末から、政府は毎日夕方、首相あるいは大臣級の政治家と科学顧問、医療関係者とともに記者会見を開いているが、会見室には記者の姿はない。「距離を置く」必要のため、報道陣は会見室の大きな画面から、政治家らに質問をするからだ。

記者会見はリモートで行われている。中央に立つラーブ外相を科学顧問、医療専門家が囲む形を取っている(官邸flickrより)

また、テレビの報道番組でも、記者が市民あるいは専門家に話を聞くとき、2メートルの距離を置くため、長く延長させたマイクを向けている。ニュース番組の司会者も出演者もともに自宅からスカイプなどを使って番組に登場する例が増えている。

こうした社会的距離戦略を取る大きな理由の1つは、感染者数をできうる限り抑えて爆発的な急増を発生させないことで、国民医療制度(NHS)の崩壊を防ぐことだ。

国民の税金でその運営資金がカバーされるNHSは、診察料が無料であるため、非常にアクセスしやすい医療サービスだ。しかし、長年、人手不足や資金難が指摘されてきた。そんな時に発生した新型コロナウィルスの感染にNHSが十分に対処できるのかどうかが大きな課題となっている。

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