世界各地で新型コロナウイルス感染が広がり続ける中、病院や医療関係者への負担が増大している。そのような中、医療に対するもう1つの懸念材料が、サイバー攻撃だ。激務で疲労困憊する中、コロナの最新情報を求めている医療関係者が、なりすましメールに注意を払いにくい状況を見越したうえで、サイバー攻撃が仕掛けられている。
とくに影響が心配されているのは、身代金要求型ウイルス(ランサムウェア)である。「ランサム」は身代金、「ウェア」は「ソフトウェア」を意味する。感染すると、コンピュータやサーバーに入っているデータが暗号化され、業務を続けるうえで不可欠な情報やメール、ITシステムが使えなくなってしまう。
被害者のコンピュータ画面上に、暗号を解く鍵と引き換えに特定の期限内に身代金の支払いを要求するメッセージが表示される。業務継続の可否を人質に取った金銭目的のサイバー犯罪だ。
病院の足下を見た犯罪
病院の場合、身代金要求型ウイルス感染はとくに厄介である。既往歴、手術の方法など、患者の最新情報にいつでもアクセスできるようにすることは、治療上不可欠だからだ。攻撃者は、「治療に遅れが生じ、患者の生命に危険が及ぶよりは、身代金の支払いを選ぶだろう」と病院の足下を見ている。
米国病院協会のサイバーセキュリティ顧問ジョン・リジは、「身代金要求型ウイルスを使った攻撃は、公衆衛生や市民の安全にとって脅威になりうるだけでなく、医療行為への妨害につながりかねない」と米政治専門紙『ザ・ヒル』に語った。
実際、2020年3月にチェコで2番目に大きい大学病院がサイバー攻撃の被害を受け、ITネットワークすべてをシャットダウンする事態に陥った。身代金要求型ウイルスが使われたのではないかとの報道もある。病院は手術をキャンセル、急患を近くの病院に転送した。
サイバー攻撃後、病院では新型コロナウイルス検査に遅れが生じているという。また、ロンドンのワクチン研究所が身代金要求型ウイルス攻撃を受け、過去の患者の個人情報を流出されて身代金を払うよう圧力をかけられるという事件も3月に起きている。同月、アメリカの医療機器メーカーも同様の被害を受けた。
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