LINEの「コロナ全国調査」は一体何に使われる? 危機下こそ問われる「プライバシー保護」姿勢

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LINEはこの全国調査について、「事態収束につなげられるよう、感染症のより正確な実態やクラスターの発生状況の把握につながるデータで行政の取り組みを支援することが目的」としており、「この用途以外(LINEの広告事業など)で調査結果を利用することはない」としている。

調査で取得したデータはまずLINE側で集計を行い、統計化したものを厚労省に提供、厚労省側で感染防止施策に役立てられるよう分析を進めるという。LINEはユーザーに対し、取得データを統計処理するため個人が特定されることはない点、目的の調査・分析後にはデータが速やかに破棄される点などを強調する。

既存データとの掛け合わせは行わない

LINEは通常の自社サービスを通じても、ユーザーの氏名や生年月日、住所などの入力情報、公式アカウントのフォロー状況やニュースの閲覧履歴から推測される興味・関心情報など、多数のデータを保有する。これらを総合的に分析することでアプリ内に配信する広告のパーソナライズ(個人最適化)を行っているわけだが、今回厚労省に提供する情報においては、「(LINE上の)既存データとの掛け合わせ分析はいっさい行わない」(LINE広報)という。

LINEのページには新型コロナウイルスに関する検討や実施などのために利用すると記されている(記者撮影)

ちなみにLINEは今回の調査を前に、同社が運営する調査プラットフォーム「LINEリサーチ」を通じ、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県に居住(登録情報ベース)のモニターを対象とする新型コロナ関連のアンケート調査も行っている。だが、この調査データに関しても今回の全国調査で得たデータとの掛け合わせ分析は行わない。

つまり今回LINEが担っているのは、厚労省から国民へ広く調査の存在を知らせて回答をお願いする役割と、集まったデータを統計化する役割。これらに尽きるということのようだ。

一方で、新型コロナの感染拡大防止策を講じるうえで、民間企業が普段の事業活動を通じて取得しているユーザーデータを活用しようとする行政側の動きもある。内閣官房、総務省、厚生労働省、経済産業省は31日、プラットフォーム事業者(IT・ネット大手)や移動通信事業者(携帯電話事業者)に対し、新型コロナウイルスの感染拡大防止に資する統計データの提供について連名で要請を行っている。

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