日本の財政がわかってない人に教えたい真の姿

小説『オペレーションZ』が描いた不均衡な世界

真山:昔のイメージで、政治家が地元のために橋や高速道路を造らせるから、公共事業費が膨らんだり、アメリカによい顔をするために国防費が膨らんだりして財政がダメになっていると多くの人は思っています。しかし、現実に予算が増え続けているのは、社会保障関係費なのですね。今ここで誰かがこの流れにブレーキをかけ、手を打たないと、世界がダメになるくらいの大きな破綻が起きませんか?

岡本:まさにそれが『オペレーションZ』で描かれた世界なのだと思います。確かに「見通しが甘かった」と言われれば、そのとおりなのですが、社会保障というものは、国民1人1人に直接サービスが提供されています。基本ができたのは、高度成長期の1960年代。医療では、1970年代に老人医療の自己負担を無料化しています。

この無料化をやめて自己負担を導入するのに10年かかりました。その後、「自己負担率を1割にしてください」というのに、2000年代の小泉純一郎政権までかかりました。それをまた今、高齢化が進む中で高齢者であっても負担能力のある方には、応分の負担をお願いしたいというふうに思っているんですけれども。国民生活に非常に直接かかわっているところをドラスチックにやるというのは、正直難しい問題があります。『オペレーションZ』のようにはなかなかいかないな、というふうには本当に思います。

真山:小説でも、そう簡単には進められませんでした。

できるだけわかりやすく国民に伝えたい

岡本:ただ、例えば、最近ではギリシャが財政危機に瀕して、国際的に救済してもらうのに財政改革が前提条件になりました。国民生活にかなりの無理をお願いする改革をやらざるをえなかったわけです。

そういうことを避けるために、社会保障の現状をできるだけわかりやすく国民に伝えて「こういう道筋でいけば、安心した社会保障制度になるんだ」ということを示しながら、1つ1つの改革を漸進的にやっていくしか道はないと正直に思っています。ドラスチックな改革を求める人には「まだ生ぬるいんじゃないか」と映るかもしれませんが。

真山 仁(まやま・じん)/1962年、大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科卒業。新聞記者、フリーライターを経て、2004年に企業買収の壮絶な舞台裏を描いた『ハゲタカ』で衝撃的なデビューを飾る。ほか作品多数(撮影:尾形 文繁)

真山:実は、『オペレーションZ』は、連載中にこちらの思いが読者に届いていないんじゃないかと無力感が募る小説でした。つまり、問題はわかっており、反論はあっても、国の借金を返すのが最善の策で、収支のバランスを正すのが是であるのは間違いないわけです。問題は、総理大臣や財務省がリーダーシップを取ってそれをどう動かせるか。

例えば社会福祉について、収入を大幅に増やすのが難しければ、少ない予算でやりくりする努力をすべき。昔は、家族や近所が自助努力で行っていた部分が大きかった。「財源が足りない分、すべてをお金で解決するのではなく、国民皆さんのマンパワーも投じて、総力戦で取り組みましょう」と、財務省が言うのは難しいですか?

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