日本の財政がわかってない人に教えたい真の姿

小説『オペレーションZ』が描いた不均衡な世界

岡本:空気のように感じられている行政サービスも、コストをかけて国や自治体が提供しているわけです。それを若い方含め皆さんに理解してもらう必要があります。高福祉で有名なスウェーデンは消費税率が非常に高い(25%)わけですが、かつて経済危機に瀕したとき、公的年金をカットして消費税率を上げるという政策を実行したことがあります。当時、私は課長だったのですが、スウェーデンの担当者の方々と議論する機会があって、「何でそんなことができたんですか?」と質問したら、向こうの方は「なぜ、そんなことを聞くんですか?」という反応でした。

「このままだと自分たちを支えているこの国のシステムが壊れるではないか、と国民が政治を後押しした」と言うのです。ものすごくびっくりしました。「ゆりかごから墓場まで」というように、一生のすべてに公的な負担がかかわっていることを、国民がよく理解しているからでしょう。日本はそこまでの高福祉ではないにしても中福祉以上にはなっています。国のシステムがなくなったら、今の生活の基盤は大きく損なわれることはわかっていただく必要があります。

真山:戦後の日本は、経済大国になれば幸せをつかめると思っていました。ところが、スウェーデンは決して経済大国ではないのに高福祉を実現し、国民の生活水準が高い。さらに、自分たちの国のありようによっては、「もっと国民が国に税金を出すべきだ」という発想が生まれるほど、国民の理解が進んでいる。

平成の30年間で社会保障予算は3倍に

岡本:スウェーデンの国としての活力が低いかというと、国際的な企業も生まれていますし、国民1人1人の満足度は高いと思います。一方で、われわれの生活が行政サービスのうえに成り立っているのだと理解をいただけませんと、「負担だけ押しつけられているのではないか」ということになってしまいます。

岡本薫明(おかもと・しげあき)/1983年東大法卒、同年大蔵省(現財務省)入省。2015年官房長、2017主計局長。愛媛県出身(撮影:尾形 文繁)

では、なぜ日本の財政赤字が増えたかと言えば、社会や経済の大きな変化が背景にあります。平成の30年間を振り返ると、最初のころはバブル経済で、当時、過去最高の60兆円という税収を記録しました。その後、バブル崩壊によって税収は落ち込みますが、平成の最後になってようやくもう1回60兆円を超えた(平成30年度)わけです。

ところが、一般歳出の予算規模は平成の初頭で70兆円くらいでしたが、今は約100兆円と、30兆円も増えています。このほとんどが社会保障予算の増加によるものです。社会保障予算は、平成の30年間で3倍になりました。逆に、社会保障以外の政策的な経費は総額で見ると平成の初頭と変わっていません。当時よりもGDP(国内総生産)は増えていますので、対GDP比では減っています。

高齢化が進めば、年金や医療・介護などの社会保障予算は当然増えます。一方、日本経済は非常に長く続いたデフレ経済の下で、経済の立て直しが最優先されて、なかなか負担の議論ができなかったわけです。

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