日本の財政がわかってない人に教えたい真の姿 小説『オペレーションZ』が描いた不均衡な世界
岡本:「これをやれば財源不足は解決する」というのは難しいのですが、考え方としてはおっしゃるとおりです。かつては所得の再分配による公助よりも自助と共助が日本社会にありました。都市への人口移動や核家族化によって公助が拡大しましたが、しかし、すべてを公助でやると結局、国民の負担に跳ね返ってきます。「お金がないから社会保障をカットします」ではなく、公助と自助、共助のバランスの見直しを考えていく必要がありますね。
真山:財政の収支バランスを取り戻すには、歳出を削るか、ほかの歳入を足すかのどちらかですね。後者の方法としてまず考えられるのは、消費増税です。ほかの増税の方法も検討し、何人もの専門家の話を聞きましたが、最終的に、徴収しやすく、国民に薄く広く負担してもらうことができる消費税の長所については納得しました。
昨年税率が引き上げられたこともあり、日本の消費税を「高い」と言う人もいますが、実際にはこんなに税率の低い先進国はない(日本の10%に対し、欧州は20%台が多い)。消費税率を1%引き上げれば、おおむね2.5兆円の税収が入ると言われますから、あと10%上げて20%にしたら、財政のバランスはそうとうよくなりませんか?
社会保障の不均衡を安定させねばならない
岡本:消費増税では毎回、消費に影響を与えたという議論があります。確かに、消費増税は、実質所得を下げる面もありますので、経済が好循環にあって所得が伸びていく状況にしていくことが重要です。
ただ、仮に財政赤字がなくなったとしても、社会保障のほうにも手を付けていないと、その翌年からまた歳出が伸びていくということになりかねません。財政収支の収支尻を合わせることよりも、むしろ社会保障のアンバランスを中期的にどう安定させるかが重要です。それができれば、正直、日本の財政の問題はほとんど健全化すると思います。だから難しいんですけども。
真山:平成以降は、阪神・淡路大震災や東日本大震災、原発事故など、想定しない出来事もたくさん起きています。
岡本:近年の大災害や将来想定される大地震などにより、多くの国民の生命や財産が危険にさらされるのであれば、社会保障以外の予算を抑制している中でも、一時的にその部分は増やさなければなりません。逆に言うと、そうした万一のときの対応力をつけるためにも、日本の財政が「さらにおかしくなる」と不信感を持たれないようにする必要があります。財政健全化は一足飛びにはできませんが、一定の目標を立てて着実に進んでいることをちゃんと内外に示していくことは大事です。
真山:最近はSNS(交流サイト)などで「国の借金は問題ではない」「政府が脅して国民のお金をむしり取ろうとしている」と言うような人が増えています。「国の持つそうとうな資産も計上したバランスシートでみれば、国の借金額は決して大きくない」と主張する論者もいますね。実際は、どうなんですか?
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