日本人市民が見た「イタリア都市封鎖」のリアル 休校から「外出自粛」で生活はどう変わったか

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パスタを打ったりケーキを作って時間を潰すのか、小麦粉類が品薄に(筆者撮影)

明日から外出規制になるというスクープが報道された日の夜、イタリアでは数少ない深夜営業のスーパーマーケットは焦って買い物に走る人であふれかえった。ミラノのスーパーの棚はガラ空きになっているというニュースも聞こえてきた。でもスーパーの食料品の品ぞろえはすぐに回復した。米もパスタもたっぷりある。

ただ、私が買い物に行ったとき、消毒液の類い、使い捨て手袋はすべて売り切れだった。ただでさえ手湿疹がひどいので料理のときには使い捨て手袋を使うことが多いのだが、今は手洗い手洗いの連続で、ますます手荒れがひどい。手袋がないのはとても困る。

買い物に行くときは「1人」がルール

買い物に行くのは1人で行かないといけない。どうせ家で一緒にいるのになぜ?と思うのだが、1人より2人、2人より4人のほうが、それだけ感染の可能性が大きくなるからだそうだ。そして、出かけるときにはいちいち自己申告書を書き、マスクと手袋を持ち、入店制限の行列覚悟で出かけなければならない。

入店制限するのは買い占め防止ではなく、店内に一定の人数だけが入れるようにして、人と人の距離を保つようにしているからだ。レジで並ぶときも、床にテープが貼られている。イギリスやアメリカが「ソーシャルディスタンス」なんて言って始めたように日本では報道されているけれど、その前からイタリアではやっていたのだ。

それにしても1人で行かないといけないから、買いだめは重くて大変だ。私の家は街中から離れているので、最寄りのスーパーまでは車で行く。だから重いといっても車までだし、カートを使えばいいのだが、カートに触るのも、ちょっと躊躇する。カートにウイルスはついてないの? そもそも棚に並んだ商品は? 考え出したらキリがない。お年寄りや徒歩で買い物に行く人は大変だと思う。感染防止のためにはなるべく行く回数を減らしたほうがいい。

薬局でも床には距離を保つよう、テープが貼られている(筆者撮影)

街は人けがなくなり、毎日夕方に発表される感染者数、死亡者数は、うなぎ上りに増えて、家でテレビを見ているしかない私たちを、つらく暗い気持ちにさせた。3月19日には、ついに中国の死者数を超えてしまうという最悪の事態に。感染者数、重症者数が爆発的に増えたために、病院の集中治療室のベッドが足りない、医療スタッフや医療器具が足りないという悲鳴がイタリア各地から聞こえてきた。

ミラノの北東40キロのところにある、感染のいちばんひどい街の1つ、ベルガモからは、毎日の死亡者が多すぎて埋葬できる場所も棺も足りなくなり、軍隊のトラックで別の土地へ運ばれて行ったというショッキングな映像が届いた。高齢の両親をいっぺんにコロナウイルスに奪われた青年は、救急車で運ばれていったそのときから、どこにいるのかも、どんな容態なのか、生きているのか、死んでいるならどこに埋葬されたのか、それすらもわからないという。

感染症であるがために病院へ見舞いに行くことはもちろん、お葬式すらしてあげられない家族の苦しみは想像すらできない。医療スタッフは不眠不休で働き通し、疲れ果て、院内感染によって亡くなる人が増えた。3月27日の時点で医師の死亡者は44人。

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