3月に入って屋内における喫煙スペースの閉鎖を表明するオフィスビルや商業施設などが相次いでいます。4月1日から喫煙に関する規制が一段と厳しくなる「改正健康増進法(受動喫煙防止法)」の全面施行を控えていることも影響していますが、実は別の理由があります。
それは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大です。屋内の喫煙スペースがクラスター(感染者集団)発生の原因となる可能性が懸念されているのです。
屋内喫煙スペースにクラスターの懸念
日本では3月19日、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が「最も感染拡大のリスクを高める環境」として、①換気の悪い密閉空間、②人が密集している、③近距離での会話や発声が行われる、という3つの条件が同時に重なる場を避けるように、改めて警鐘を鳴らしました。屋内の喫煙スペースには、まさにこの3条件がそろっています。
加えて新型コロナウイルスに限りませんが、感染症の予防においては、徹底した手洗いが推奨されています。ウイルスがついている可能性のある手で顔を触ってしまうことによって、口や鼻、目などからウイルスが侵入して感染するリスクが高まるからなのですが、喫煙行為は、まさに手を口に持ってくる動作そのもの。頻繁に行うことで感染リスクが上がってしまいます。
喫煙スペースは、不特定多数の人が利用するという特徴もあり、クラスターが発生しても感染ルートが追えなくなり、感染流行を阻止できなくなる恐れもあります。
加えて、新型コロナウイルスにはこれ以上に喫煙者にとっての不都合な話があります。喫煙していると新型コロナウイルスに感染した場合に重症化する可能性が高いと指摘されていることです。
WHOが中国の新型コロナウイルス感染者について発表したデータ(Report of the WHO-China Joint Mission on Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)16-24 February 2020)によれば、新型コロナウイルスによる致死率は男性が4.7%、女性2.8%と男性のほうが高くなっています。
これだけで明確な因果関係は立証できないものの、同じくWHOによれば(WHO report on the global tobacco epidemic 2019)、中国では喫煙率は男性で約52%、女性は約3%と男性のほうが圧倒的に高いことがわかっています。
最近、このことに関する研究結果が2つ発表されました。
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