タバコの煙を肺の中に入れていると、感染に対する免疫力が低下します。どこかの免疫学者がタバコを吸うと免疫力が高まるなど変なことを言っていたこともありますが、タバコの煙は全身の免疫力も低下させるというのが正しいのです。当然、煙が入ってくる肺においてもいろいろな機序で免疫機能を低下させます。そのことが、肺の感染症を増やすと考えられます。
具体的には、肺結核、肺炎球菌肺炎、レジオネラ肺炎、インフルエンザ、同じコロナウイルスのMERS等で、感染のリスクが高まったり、重症化しやすくなったりすることが報告されています。
東京新聞:TOKYO Webは3月21日配信記事で、「アメリカのワシントン・ポストが新型コロナウイルス感染症の死者について男性が女性に比べて多い傾向が見られると報じている」と紹介しています(「コロナ死者、男性の方が多い傾向 イタリアは7割以上、理由不明」)。これについても喫煙率の高さが影響している可能性はありえます。
WHOや海外の政治家が喫煙の危険性を指摘
新型コロナウイルス感染症の予防という観点においては、禁煙の重要性が強く言われるようになってきました。
例えば、WHOの公式ホームページでは、新型コロナ感染症にかかわるQ&Aで、「してはいけないことはありますか?」という問いに対する答えとして、最初に「喫煙」と書かれています。また、3月20日に同ページで紹介された事務長談話では、「タバコは吸わないで。喫煙は、あなたが新型コロナウイルス感染症になった場合、重症化するリスクを高めます」と記述されています。
また、ロイターは3月9日配信記事で、アメリカ・ニューヨーク市のビル・デブラシオ(Bill de Blasio)市長が「タバコや電子タバコを吸うと、コロナウイルスに感染した場合、重症化しやすい」とコメントしていることを報じました(「Smoking or vaping increases risks for those with coronavirus: NYC mayor」)。
海外では、公的機関や政治家からも警鐘が鳴らされていますが、日本では役所や政治家などから、こうした情報が公にあまり伝わってきていません。私自身、医療現場で胸部CT画像の相談を受けているほか、PCR検査に当たるなど新型コロナウイルス感染症の診療に当たっています。地元の岡山ではまだ広がっていないこともあり、幸い現時点では陽性患者をまだ診てはいませんが、この点についてはとても心配に思っています。
少しでもリスクを減らすとすれば、禁煙するほかないというのが呼吸器内科医としての意見です。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら