突然始まった休校に合わせ、家で過ごす子どもたちのため、良質なオンライン教材や動画、書籍の電子版などが官民問わず、さまざまな形で無料開放された。しかし子ども自身が喜んで利用するかどうかは個人差が大きく、SNSでは子どもが「やらない」「取り組まない」「興味を示さない」という保護者の悩みも目に付いた。
「学力を低下させたくない」「せっかくの休みを有効に使ってほしい」――。そんな親の願いどおりにはなかなかいかないものだ。では今回のような緊急時、子どもの学びを止めない方法はあるだろうか。「双方向」のコミュニケーションをキーワードに探ってみた。
いつもの学校、いつもの先生
3月17日、午前9時。児童たちの姿がない休校中の校内で、あちこちから「おはようございます」の声が聞こえてくる。
埼玉県さいたま市、私立さとえ学園小学校。休校が始まった3月2日からビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」を取り入れ、オンライン授業を継続してきた。
この日はZoom生活10日目。ガランとした教室でタブレットやノートパソコンに話しかける教員と、自宅にいる児童たちがオンラインでつながり、出欠を取ったり、日課の黙想をしたり。画面越しの児童たちは制服か体操服を着用し、普段と同じルーティーンで「朝の会」が開かれている。
同校では2018年から児童全員がiPadを所持し、学校や自宅での学習、連絡に活用。自宅にWi-Fi環境がなくても利用できるようセルラーモデルを導入しており、児童らは学校生活の中で当たり前にiPadを使っている。
休校要請が出された日の夜、Googleのメッセンジャーアプリ「ハングアウト」の教員グループに小野田正範校長がメッセージを発信した。それは、今後起こりうる課題は何かを洗い出そう、という呼びかけ。すでに21時を過ぎていたが、ICT部メンバーの教員らが即座にタスク管理ツール「Trello(トレロ)」でプロジェクトを立ち上げた。
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