「オンラインで授業」先生たちの試行錯誤の日々 突然の休校措置が切り拓く未来の教育とは

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一方、さとえ学園小学校は体験型教育や複合型教育を重視し、学校の設備は非常に充実している。しかし山中先生が着任した数年前までは校内に十分なパソコンがなく、ICT化は出遅れていた。潤沢な予算もない中、一からICT化を整備するなら公立校のモデルになる取り組みにしようと教員間で意識を共有。

そのため教材費と同水準でiPadを導入できるようにし、基本的には無料で、学校外でも使えるアプリやツールを多用した。またICTリテラシーやスキルに応じてiPadの機能やアプリに制限をかける、独自の「レベルアップ型ルール」を考案。小学生でも自分自身をコントロールし、適切かつ効果的にiPadを使いこなせるようにした。

保健体育のオンライン授業中、ガランとした教室だが先生と児童のやりとりは続く。声を聞いているだけでは、教室内に児童がそろっている錯覚すら起こる(筆者撮影)

小中で児童生徒1人1台コンピューターを2023年度までに実現させるという政府の「GIGAスクール構想」は、今回の休校措置によって、今後さらに加速していくだろう。

「学校教育が充実していなければ、社会は衰退します。誰もが平等にICTツールを使えれば、すべての子どもたちが自分の学び、可能性を広げていけるようになるでしょう。今回の事態がいいきっかけになって教育のアップデートが進むことを願い、私たちのノウハウを広く伝えていきたい」(山中先生)

学校ではない居場所もオンラインで

一方、学校外でも子どもの支援に取り組む企業や団体があった。このうち、政府から休校要請が出された翌日、急きょオンライン講座の立ち上げを宣言したのがミライLABO(東京都渋谷区)。普段は渋谷を拠点に認可外保育園のほか、主に小学生を対象にサードプレイス(学校でも塾でもない第三の居場所)として「コドモクリエイターズインク」を運営している。

このうち「コドモクリエイターズインク」は、小学生のための起業家教育として企業とコラボレーションしたり、さまざまな企画で多様性に触れる学びを実践したりしている。学校や塾ではできない体験、学びができる場としてニーズがあり、渋谷以外での開設希望が多く寄せられていた。

ミライLABOが急きょ実施したオンライン講座は、全国から希望者が殺到した。渋谷区の「100BANCH」にて(筆者撮影)

そのため4月から全国の誰でも参加できるオンライン講座(有料)の開設を目指し、準備を進めていたところ、突如、休校要請が出された。それならばと、3月に10日間、希望者20人に無料でオンライン講座を受けてもらえるよう計画を前倒し。SNSなどで参加者の募集情報は広がり、瞬く間に希望枠は埋まった。

反響の大きさに応えるため、その後、各日の参加者を100人にまで拡大。講座実施日も5日分、追加し、計15日間で開講した。

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