ソルベンシーマージン比率の見直しが遅れれば生保にはマイナスの影響《ムーディーズの業界分析》

拡大
縮小


金融機関グループ
VP−シニア・アナリスト 三輪昌彦

 保険会社の規制資本であるソルベンシーマージン比率について、金融庁は計算方式の見直しを進めている。具体的には、短期的見直しとしてリスク係数の引き上げ、中期的見直しとして経済価値ベースのサープラス(資産価値と負債価値の差、純資産の価値)によるソルベンシー評価への移行が検討されている。

短期的見直しに関連して、金融庁は2008年2月、リスク計測(VaR、期間1年ベース)の信頼水準を現行の90%から95%に引き上げること等を内容とする「ソルベンシー・マージン比率の見直しの骨子(案)」を発表した。さらに、08年10月の大和生命の破綻やそれ以降の金融市場の混乱等を踏まえて、金融庁は09年8月、若干の変更を加えた改定骨子(案)を発表している。同時に、12年3月期末の決算から、新たな基準による比率を早期是正措置の指標として用いる予定としていることを発表した(新基準による比率の開示自体は11年3月期末より開始予定)。

新基準の導入により、各社のソルベンシーマージン比率は半減となるケースも想定されるが、足元の金融環境等を前提とすれば、ムーディーズが格付けを付与している生保に関して、基準変更の影響により早期是正措置が発動される200%を下回るケースはないものと考える。200%からのプラスの乖離幅は現在の基準と比べて大きく縮小することが想定されるため、資本水準が非常に低い生保においては株式等のハイリスク資産削減が加速する可能性もあるものの、ほとんどの生保にとって当該変更の影響は限定的と考える。また、生保の内部リスク管理においては、95%以上の信頼水準をベースとしたVaRがすでに一般的であるため、規制資本が95%の信頼水準をベースとしたリスク評価に変わったとしても経営上の影響は限定的であろう。

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT