新型コロナで「恐慌」は絶対にやって来ない

群集の恐るべき多数決圧力を見せつけられた

しかし、今回、もっとも書き留めておくべきことは、「株式市場以外での群集の多数決圧力」である。

日本では安倍晋三首相が学校の休校の要請をした。専門家に相談せずに、である。専門家会議では事後的に、必要があったかどうか議論が分かれたそうだ。大阪府の吉村洋文知事も、独断で彼が主張するところの厚労省関係の専門家が提示した文書に基づき、誰にも相談せずその文書を公表し、大阪と兵庫の往来の自粛を求めた。

その後、安倍首相は「学校の休校の要請は延長せず、自己判断に任せる」とし、「イベントなどの自粛要請も個々に判断してもらい、行う場合には十分に対策をとって行ってほしい」と言った。だが、これに基づき、自己判断して、さまざまな対策を講じてイベントを開催した団体は、世間から猛烈な批判を浴び、あたかも犯罪者であるかのような言われ方をした。

まず、昨今話題になっているエビデンス(科学的根拠)ベースの政策決定、要は客観的なデータに基づいて政策の効果を推計し、そのうえで政策の意思決定をせよ、ということだが、休講要請はエビデンスなどあるはずもなく、それどころか合理的な議論もせずに決定された。

ロジック(論理)抜きの多数派の圧力

しかし、世間では賛否あると言いながら、多数派は支持した模様であり、政府筋は「休講要請の効果は数字では表せないが、一定の成果があったと思われる」と主張している。

大阪府知事の行動もメディアでは英雄扱いで、厚労省など国の隠蔽体質を批判する格好のネタとされてしまった。「官僚と言えば隠蔽」というのが多数派のロジックのようである。自主的に頭を使って判断せよと言われて、そうした場合でも、多数派のエビデンスもロジックも抜きの多数派の圧力で押しつぶされてしまうことになる。彼らは、次回は無観客でイベントを行う予定だそうだ。

これらの例を超えるスケールで多数派の圧力が生じているのは、経済政策である。アメリカでは220兆円規模の対策が打たれることとなり、日本も「それに負けじ」とカネをばらまく案が有力のようだ。リーマンショック時を超える対策を、と言っている。これを受けて日米の株価は大暴騰した。
     
しかし、これらの景気対策は何のために行うのか意味不明である。日銀の株式買い増しが新型コロナ対策としては意味不明であるのは当然として、日本政府だけでなく、ついにはアメリカまで国民にカネをばらまくとは、世界の経済政策論議も、もはやロジックは要らなくなったようだ。

次ページ「恐怖に支配された多数派の圧力」が勝ってしまう現実
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