新型コロナで「恐慌」は絶対にやって来ない

群集の恐るべき多数決圧力を見せつけられた

株式市場も、もちろん同じで、最初に「新型コロナウイルスが武漢を席巻した」というニュースが1月後半に世界を駆け巡った時、中国国内の人々はパニックになり、中国政府は通常ではありえない強権的な都市封鎖で対応した。だが株式市場はそれを無視し、2月12日にアメリカのNYダウ平均株価は史上最高値を更新した。2月1日に発覚したクルーズ船ダイヤモンドプリンセス号の騒ぎも、日本政府の対応を事細かに批判し、アジア極東の出来事として、見物し、批判し、ニュースのネタとしていたのである。

これらの人々の中に埋もれず、この時点で冷静にコロナウイルスのリスクを判断して、株をカラ売った投資家は、合理的な判断をしたため、大きな損を被ることとなった。

ところが、3週間後、2月24日からアメリカ株は突如暴落を開始し、3月2日に底打ちをして大きく反転を始めたように見えたものの、3月9日からは、史上最大ともいえる大暴落となった。その後は「壊れたおもちゃ」のように乱高下を繰り返しながら暴落を続け、3月23日からアメリカ政府と議会が史上最大の200兆円を超える経済対策で合意することを見込んで、株価は一転して暴騰を始めた。

株価の動きはすべて「市場の多数派の都合」で決まった

ここでの株価の動きは、すべて市場の多数派の都合で決まった動きである。新型コロナのリスクの分析とも、それによる企業業績への影響とも、いわば無関係に決まったのである。

最初に暴落が始まらなかったのは、株価は長期のバブルが続いていたので「バブルがさらに続いて欲しい」という願望と「今崩壊されては困る」という恐怖が組み合わさって、驚くほど動きのない相場となったのだ。2月23日までは、恐怖に対処するために、暴落に備えて、少しずつポジションを整理し、一方で投げ売りをして損をしないように、相場を崩さないようにバブルをすぐには壊したくないという願望を実現したのだ。

しかし、そのバランスは2月23日についに崩れ、「崩れてしまえば、とにかく早く逃げ切りたい」という恐怖の中での願望が実現し、大暴落となったのである。

この相場における「投資家の願望の自己実現」という話は、バブル膨張、崩壊の両側面について、東洋経済オンラインの連載で私が常に書いてきたことで、特に目新しくはない。だが、これほど顕著に表れると、教科書に載せておきたくなるのである。

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