コロナ恐慌で「つぶれる国」「生き残る国」の大差 中国経済は「恒常的な低成長時代」へ突入する

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中国は、それより深刻な状況にある。アメリカによる高関税政策、先端技術の移転規制、そして新型コロナウイルスと立て続けに打撃を受けたことで、中国の輸出の約半分を支える外国企業に、「中国で輸出向け生産をすることのリスク」を意識させてしまった。

すでに中国の輸出は減少しており、これまでの高度成長の「原資」であった貿易黒字は、今年に入り赤字に転じている。習近平(シー・チンピン)政権は、国有企業に政治的な号令をかけることで困難を乗り切ろうとしているが、それでは救いにならない。

中国経済はこれから恒常的に低成長に転ずる可能性が高い。これまでの中国は、その急速な台頭で地域、そして世界の力のバランスを揺さぶってきたが、今度はその停滞が国内、そして周辺地域を不安定化させることになるかもしれない。「一帯一路」も、これまでの勢いを保つのは難しい。

ロシアも長期的な停滞へ

ロシアでは新型肺炎の患者はまだ少ないことになっているが、グローバルな「コロナ不況」で原油価格が大幅に下落。これでは、2024年のプーチン大統領の任期終了までに43兆円相当を使い、インフラ建設などを行うことで景気浮揚と円滑な政権交代を図ろうとした当局のもくろみは狂ってしまう。原油価格の低迷は長く続く。ロシアは長期にわたり、停滞を運命づけられるだろう。

こうした状況では、資本力と財力のある企業や国家が生き延びる。資本主義はもちろん、なくならない。元手を増やして豊かになりたいという、人間の根源的欲望はなくならないからだ。国家資本主義の誘惑に駆られて政府の力に依存する国は、費用だけかさむという非効率な経済にバカを見る。

不況に陥っても、5Gをとりあえずの筆頭に、神の領域ともされる人工知能(AI)、ロボット化、遺伝子工学などの技術を磨いて商品化していくべきだ。金融バブルで虚勢を張ったり、呪文のようなえせ経済理論に頼るより、こちらのほうが元手を確実に増やすことができる。

<本誌2020年3月24日号掲載>

河東哲夫(AKIO KAWATO)
1947年、東京生まれ。外務省入省後、ソ連・ロシア3回、計11年、西独ボン、スウェーデン、ボストン総領事、在ロシア大使館公使、在ウズベキスタン・タジキスタン大使を歴任。またハーバード大学、モスクワ大学に留学。2004年、外務省退官。日本政策投資銀行設備投資研究所上席主任研究員となり評論活動開始。東京大学客員教授、早稲田大学客員教授、東京財団上席研究員など歴任。おもな著書に、「遙かなる大地」(熊野洋の筆名によるロシア語小説、日本語版、草思社)、「意味の解体する世界へ」「外交官の仕事」「ワルの外交」「米・中・ロシア虚像に怯えるな」(いずれも草思社)。多言語ブログ「Japan and World Trends」を運営中。
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