海運などに安定感、証券や小売などは約3割が辞める
最後に、805社を対象にした、業種別の集計結果を見ていこう。
まず全体の定着率の平均は86.6%。男性88.0%、女性83.4%だった。これは東ソーのように高卒も含む数字。男女差も小さく、CSRに力を入れている会社がそろっているため、高い定着率となっている。
対象社数が2社以上の業種のなかで、定着率がもっとも高かったのは海運業の100%(5社)。
商船三井(男性40人、女性5人)、日本郵船(同27人、同8人)、川崎汽船(同15人、同6人)など5社がすべて100%。大手企業ばかりだが海運業はかなりの優良業種といえる。
他では、電気・ガス業97.9%(11社)、ガラス・土石製品97.5%(9社)、石油・石炭製品95.6%(3社)、化学92.8%(66社)、非鉄金属92.3%(10社)なども高い。
一方、低い業種は、証券・商品先物66.4%(5社)、小売業70.8%(51社)、サービス業72.6%(48社)となった。
土日の勤務が多い小売業やサービス業は有給休暇取得率なども低い。休暇を取りにくいことも退職者が多い要因かもしれない。今回のランキングでは昨年に引き続き、製造業が多くランクインした。
こうした企業には高卒などの大卒者以外の新卒者も多数存在する。
一部の幹部候補だけでなく全体で高い定着率を誇る職場は働きやすさの面で「よい会社」と考えてよさそうだ。
さて、一般的に就職活動でいわれる「ホワイト企業」はこの3年後定着率や福利厚生などで判断されることが多い。
だが、「社会全体に対するホワイト企業」を考えると、働きやすさだけでなく、事業活動で発生する負の面を改善する、法律などのルールを守る、不公正な取引を行わない、海外等の取引先での児童労働を防止する、国内外の各地域とよい関係を築く、といった、いわゆるCSR面での対応も含まれるべきだ。
こうした点に注意していないと海外のNGOや政府などから批判や制裁を受けたりして、事業活動に影響が出てくることもある。
一般的に従業員の定着率が高い会社はCSR面に配慮して経営しているところが多いが、中には職場は「ゆるい環境」で働きやすいものの規律などに問題がある会社もある。
よい会社を見つけるために「3年後定着率」の数字は重要ポイントになるが、それだけを鵜呑みにすることがないよう注意した方がよいだろう。
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