コロナ禍「フランス」は1週間で様変わりした マクロン大統領の演説から生活が一変

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外出時には外出理由を書いた許可証を携帯しなければなりません。これに違反した場合は、135ユーロの罰金が科されます。実際、17日の正午以降、街のいたるところで警察官が車や歩行者の検問にあたっています。

現在、外出時はこの許可証を携帯しなければならない(筆者撮影)

想像してみてください。これまで散々自由を謳歌してきた人間が、突如として外出先とその理由を告げなければならなくなったのです。医師や医学の専門家によると、コロナウイルスを封じ込める唯一の方法は他者との接触を断つことです。

これだって、キスがあいさつ代わりで、握手をしたり至近距離で話をしたりするのが大好きなフランス人にとってはとても難しいことです(最近では、日本式のお辞儀が最高のあいさつになりつつある……)。

フランスでも医療用マスクが足りない

突然、物理的な距離を保つことがウイルスという敵と戦う唯一の手段になったのです。距離を保つというのは国家間にも及びます。フランスは国境封鎖を決め、ヨーロッパも非EU圏外から入国させないことを決定しました。世論としては、フランス政府がなぜより早期に国境の封鎖を決定しなかったのか、多くの国民が疑問を抱いています。

そして今や、フランスは外国人の入国を禁止しているだけでなく、フランス自身がコロナウイルスに関して最も「危険性」のある国となりました。フランス国民の入国を禁止する国は100以上です。

3月23日時点でフランス国内における感染者数は1万6018人、死者数は674人に上っています。そして私たちの耳に聞こえてくるのは何でしょうか? 国内で医師や医療スタッフを守る十分なマスクが不足しているという声です。理由は誰にもわかりませんが、これは事実です。マスク、アルコール除菌ジェル、ウイルスの検査キットが多くの国民の手に届かないのです。

自宅にこもるフランス国民のすべては、自分たちがこの恐ろしい、見えない敵との戦いに一役買うことができると理解しています。みんながこれまでとは違った暮らしに適応しようと頑張っているところです。

「Nous sommes en guerre(私たちは戦争状態にある)」、そしてこの戦いにおける最良の戦法が外出しないことなのです。これからもフランスの様子を伝えていきたいと思います。

ドラ・トーザン 国際ジャーナリスト、エッセイスト

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Dora Tauzin

フランス・パリ生まれの生粋のパリジェンヌ。ソルボンヌ大学、パリ政治学院卒業。国連本部広報部に勤務ののち、NHKテレビ『フランス語会話』に出演。日本とフランスの懸け橋として、新聞・雑誌への執筆、テレビ・ラジオのコメンテーター、講演会など多方面で活躍。著書に『フランス式いつでもどこでも自分らしく』『パリジェンヌはいくつになっても人生を楽しむ』『好きなことだけで生きる』などがある。2015年、レジオン・ドヌール勲章を受章。公式ホームページはこちら、 Facebookはこちら

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